IS〜インフィニット・ストラトス〜 とあるはみ出し者

□第15話 強奪
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マドカは技術班特製の白人系のデスマスクを付けたままフランスを歩いていた。デスマスクと言っても、質感など本物の顔と変わらないためバレる確率は低い。


「(合図って一体なんだろう?)」


シャルロットとはアドレスも交換して、発信機も付けているため居場所は分かる。デュノア社の5階フロアにいるのは分かっているし、実際に望遠レンズで窓際 に居ることも調査済み。アイザックが合図を出すと言っていたのだが、その合図がよく分からない。そう思っていると、デュノア社にミシェルがやってきた。


「…「決行だ」―――!」


突然、すれ違った男に驚くが、その男はすれ違いざまにアイザックの部下だけが持っているペンダントを持っていた。マドカはすぐに我に返ると、アラクネに偽装したサイレント・ゼフィルスを展開し、デュノア社に向かって吶喊を開始した。


「(合図って…いきなり過ぎる!)」


毒づきながらもハイパーセンサーに捉えたシャルロットがいる場所へと吶喊し、フロアのガラスをライフルで撃ちぬき、社内に侵入する。無論、そのような事をすれば警備員などが来るのだが、マドカの狙いはシャルロットのみ。シャルロットの目と鼻の先に突撃してきたのだ。


「シャルル・デュノア……頂く」


機械を何重にも通した声でそう宣言する。シャルロットは逃げようとするが、それよりも早くマドカがその体を掴み、スタンガンで気絶させる。その瞬間にシャルロットの耳元でささやく。


「ゴメンね。でも、大丈夫だから」


「え―――」


気を失いぐったりとしたシャルロットを抱えながら、やってきた警備員を牽制しながら外に出る。しかし、そこにやってきたのはフランスの国家代表IS操縦者。


「さすがに…速いな」


「一応、政府から警戒するように言われていたからね。それよりも、シャルル・デュノアを速やかに解放し、投降しろ。そうすれば…まぁ、そこまで悪いようにはしない」


アラクネに偽装しているため、マドカは十全の力を出せない。サイレント・ゼフィルスであることを気づかれればこの計画もおじゃんになってしまう。しかし、 国家代表を相手にこの状態で勝てるかというと怪しい。基本的にマドカは戦う相手を常に自分より強者であると考えている。それは、ツングースカにおいて桂と 戦った経験から学んだこと。だから戦闘よりも逃走を最優先させる。


「(さすがに…このまま時間が経てばこちらが―――ん?)」


その瞬間、相手のISの装甲に何かがあたった。それに気づいた操縦者が装甲を見ると煙を上げて腐食していた。


「な、なん―――ッ!?」


次々と自分に撃ち込まれる弾丸の数々。逃げようにも、装甲やバーニアが腐食し始めて上手くいかない。


「一体何が―――」


操縦者が必死に回避しようとしているが、何が起こっているのか分からない。出来るのはせいぜい自分の身を守りつつマドカをロックオンするくらい。しかし、 マドカもシャルロットを盾にしているため攻撃はできない。こうしている間にもどこからか撃ち込まれる弾丸により装甲は腐食している。










「ジョシュア。右に五度、下に八度だ」


「了解」


廃ビルの屋上に二人の男がいた。一人は観測用の望遠鏡を覗きながらフランスの国家代表のISの距離を見ている桂。もう一人は、伏せ撃ちの体制で桂から送られる情報を元に狙撃を行う大柄の男ジョシュア。


「つーか、やっぱこの腐食弾ってヤバくねぇか?」


「開発に協力している君が言うことじゃないと思うよ。それに、腐食弾じゃなくてコロージョン弾だよ?」


この二人はアイザックの命令によりマドカのサポートを命令されていた。ジョシュアはオルコット家から直接フランスに赴き桂と合流、今に至る。


「そういやそんな名前だったな。まあいいさ。それより、弾数は?」


「あと10発。そろそろ動かないとマズイね。こっちにも気づく可能性があるから」


一応、国家代表が乗っているラファール・リヴァイヴのカタログスペック上のハイパーセンサーの範囲外からの狙撃のため狙撃方向は分かっても、狙撃犯がバレる可能性は低いはずだが、増援が来ればその分バレる確率は上がる。


「お…離脱を開始するようだ。俺らも逃げるぞ」


「通信していないのにわかるって……愛だねぇ」


「うるせェよ。お前だってオルコットのお嬢様といい雰囲気じゃねえのか?」


「今丁度思春期だからね。年上に憧れる時期さ」


そんなことを言いつつも、手早く痕跡を消すとすぐにその場を離れた二人。






「悪いけど…行かせてもらう」


「ま、待て―――クソ!?」


一方、狙撃の援護を受けていたマドカは、すきを見て最高速で離脱しそのまま姿をくらました。それはコアネットワークにも補足されずに行方不明となった。フランスやIS委員会は全力を持って捜索を開始したが、北極方面に向かったということ以外足取りはつかめなかった。






「シャル!」


「母さん!」


アイザックの邸宅にて、マリエルとシャルロットが抱き合っていた。二人とも泣きながら互いの存在を確かめるように体を抱きしめあう。事情を知っているものからすれば号泣モノで、実際メイドの数人はボロボロ泣いている。


「いや〜家族って本当にいいものですね(水野晴○風)」


「……」


桂の言葉にジト目で圧力を掛けるマドカ。そして、アイザックはマリエル親子を見て珍しく優しい顔をしている。それに気づいた桂たちが唖然としていた。例えるなら「( ◯д◯)」


「さて、そろそろいいか?」


「アイザック。その…ごめんなさい」


感動の再会も一段落ついたようなので声をかけると少し顔を赤くしたマリエルが謝ったがアイザックは気にすることはないと笑い、今後のことを話し始めた。


「その…僕はどうなるんでしょうか?」


シャルロットが不安そうに質問すると、アイザックは桂とマドカを呼び寄せた。


「身柄に関しては心配する必要はないが、暫くはこいつらと行動してくれ」


「……大将。俺はそろそろ暴れたいです!」


今回の計画で裏方ばかりだったため、暴れたい桂はそう自己申告するが適当に流される。


「シャルロット。お前は…ISに乗りたいか?」


「……乗りたいです。母さんを守るためにも……僕は……私は強くなりたい」


それは、ISの腕だけではない。今回の件は自分がもう少しうまく立ち回ればもっと早く母親を助け出せたとシャルロットは思っていた。だからこそ、いろんな意味で強くなりたいのだ。


「そうか。なら…マドカに教えてもらえ。ISは…用意する」


「え?」


ISを一機用意するくらいアイザックにはたやすい。今回の件で得るものは大きい。その対価とすればイギリスも納得する。


「大将〜。デュノア社の社長から連絡が来ているぜ〜」


「クックックック。さて、暫くは休んでいるといい。此処から先は…私の領分だ」


桂を連れてアイザックは自分の執務室へと向かう。マリエルたちが心配そうに後ろ姿を見つめていたが、マドカが心配する必要はないと諭していた。
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