IS〜インフィニット・ストラトス〜 とあるはみ出し者
□第15話 強奪
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『やってくれたな』
「さて、何のことかな?」
通信を繋げてきたミシェルはアイザックを憎々しげな顔で睨みつける。対するアイザックは余裕の態度を崩さない。
『とぼけるな。タイミングのよさ、そしてその他の状況からお前が裏で手を引いているのは分かっている』
「知らんな。確かに、マリエルを支えたいのは事実だ。だが…シャルル・デュノアとは関係がないだろう? 彼とは血の繋がりはないからな」
アイザックは決して言質をとらせない。少しでも口を滑らせばそこを突いてくるのは理解しているから。一方のミシェルも同様。かつて学生時代は『似たもの同士』とよく言われていた。思っていることは同じ。
「まぁ…仮に私が手を引いていたとして……そちらにできる事は少ないんじゃないかな?」
例えば、デュノア社襲撃。コレに関しては、アラクネに偽装したサイレント・ゼフィルスが実行したが、織斑一夏誘拐事件のデータを公表しているため多国は亡 国機業の犯行と断定している。今更覆ることもあるまい。まぁ、イギリスが亡国機業と共謀したということになる可能性もあるが、桂が仕事で何回か亡国機業と ガチの殺し合いをしているためごまかしは効く。
そもそもアイザックやイギリスの機嫌を損ねれば『シャルル・デュノア』は存在しないことがバレてしまう。国力回復のために自身の娘を息子として利用しよう とした、実の母親を盾にとったなどがバレればどうなるか。しかも、国も協力していたフランスの信用は地の底に墜ちる。そこでデュノア社を切り捨てられれば そこまで傷も負わないだろうが、そうできないだけの醜聞をミシェルに握られている。
「まぁ、協力はするぞ? マリエルという対価を差し出されたのは事実だからな。仕事はしっかりとしなければならない」
『……』
ミシェルもアイザックが黒幕だと気づいている。伊達に学生時代から競い合っていたわけではない。
『クックックック。今回は私の負けか』
故にミシェルは素直に白旗を揚げた。アイザックも笑う。ミシェルは例えアイザックが黒幕だと自白しても報告はしない。なぜなら負けたから。それは一種のプ ライドのようなもの。それに、このことを公表してもイギリスは「マリエル・ローマイヤより懇願されてやむなく実行した」とでも言えばこの女尊男卑の時代。 逆にフランスが四方から叩かれる。
「お前の敗因は駒を駒として見過ぎたことだな」
『人の心は御し難い。特に女は、な。だから感情で動く女は嫌いだ』
アイザックとミシェルは似ている。しかし、違うところが一つある。それは、アイザックが駒によって対応を変えるのに比べ、ミシェルは駒によって対応を変え ることはない。だから、シャルロットを追い詰めすぎてしまい、結果として桂たちと接触するきっかけを作った。ただ、それだけの違い。
『まあいいさ。こちらとしては、シャルル・デュノアが生きている『かも』しれないとすれば色々な引き伸ばしはできる』
「こちらとしてはフランスを完全に支配下におけるのが強みだな」
フランスとしてはイギリスに頭があがらないのは屈辱だろうが、時間稼ぎはできた。第三世代機開発もイギリスからの情報を貰えば少しは進歩するだろう。だから今は屈辱に耐える時。その時が過ぎれば―――。
『いずれ喉笛に食らいついてやろう』
「期待しないで待っていよう」
どこまでも自分勝手な男たちの会談は終了した。
「(……あれ? 俺空気じゃね?)」
桂はどうでもいいことを考えていた。
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