ポラリスの星の下で
□始まりの章
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「俺はそんなに子供じゃありません!」
「とか言いつつ、嬉しそうな顔だ」
「・・・嫌では、ないです」
「素直じゃないな」
ユグドラシルは組んでいた足を戻し、逆の足を組んだ。
「久しく離れていた父親に会えるな。嬉しいか?」
「・・・いえ、別に何も思いません」
「子供らしい反応を見せればクラトスも少しは喜ぶと思うぞ」
「あの人は俺に愛情もなければ、何も期待していませんよ」
「・・・可哀想に」
「でも、・・・俺にはユグドラシル様がいて下さる。ユグドラシル様が俺を必要としてくれて、大切に思って下さるのなら、それだけで十分です」
今、俺が生きている"証"はこれだけですから。
「そうか。私はノアを1人にはしない。お前は私の大切な仲間だからね」
「ありがとうございます」
幼い頃に母を失くし、父の下で生きていてもその愛情を受けられなかったノア。だがその変わりに生涯二度と出会うことができない程に素晴らしい主に見初められ、必要とされた。それがノアの唯一生きる証。手にした力も身分も、すべてはユグドラシルのためにある。
「神子の護衛にはお前の双子の兄、ロイド・アーヴィングもいる。・・・実の兄も殺せるか?」
「もちろんです。兄といっても、小さい頃に別れたきりで記憶などありません。ためらいも慈悲も持ちあわせておりません故、ご安心ください」
「強くなったね。つらいことを押しつけてすまない」
ユグドラシルは玉座から立ち上がった。その背中に生えし羽は誰よりも美しくたくましく、ノアの心を魅了した。
「さあ、行こう。地上へ」
「御意」