ILY 日常篇

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土方side



ーーガシャン


アオイの掌から刀が落ちた。
どうしたものかと見てみれば、
その顔は苦渋に歪められていた。



『悪い、私が弱いだけなのに。
私が強くなればそれでいい事なのに。
はぁ、皆も悪かった。』



そう言って出て行こうとするアオイの手を掴んだ。
今にも壊れてしまいそうだったから。
目の前から居なくなるのが恐ろしかった。



土方「アオイは悪くないだろ。
謝るな。」


『……大好きだったんだ。』



その言葉に背筋が凍るのがわかった。
周りにいるやつらも。



『……あいつらは、私の初めての理解者だった。
ずっと一緒に、ガキの頃から4人いつも一緒で、
離れたくなかった。

戦争になって、無我夢中に闘った。
一人側に居るヤツが増えて5人で一緒だった。

戦で一人二人と死んで行く仲間を見て、
耐えられな時もあいつらが側に居てくれたから乗り越えれた。


家族なんて居なくて、
そんな時一緒に居てくれた、
支えてくれたあいつらの首を切るなんて私には無理なんだッ!

何度だって後悔したさ。
真選組に入らなければって!!
でも、真選組が私は大好きだからそんなの無理で!』



こんなに感情を剥き出しにする彼女を見たのは久しぶりだ。
涙が白く滑らかな肌を伝う。



『初めて愛をくれたのはあいつらで、
そんなあいつらをどうやって殺せっていうんだよっ!!


優しい目で私を見てくれたあいつらを、
暖かい手で頭を撫でてくれたあいつらを、
どうやって殺せっていうんだ!


毎日毎日、あいつらに会いたくて仕方ないのに!!』



ボロボロと零れる涙に切なくなる。

いくら一緒に居ても、
俺たちは"そいつら"には勝てないのだろうか。
アオイの1番になる事は無理なのだろうか、と。


男の胸倉を掴むアオイがまだ声を荒げる。



『あいつらの首を切るくらいなら、
私は自分の首を切る!!

自分よりもあいつらの方が大事なんだ!!
大好きなんだよ!


でも、ここも好きなんだ。』



声音を落ち着かせ、でも涙は出ていた。



『近藤さんや、トシや、総悟に退。
他の隊士の皆も大好きだから、迷惑は掛けたくないんだ。
なあ、どうしたら元に戻る?

私がココを辞めればいいのか?
私が士道不覚悟で自害すればいいか?

なあ、どうすればいい?
どうすれば、ここは元の姿に戻る?』



畳に座り込んで俯く彼女を見て抱きしめたくなった。

彼女は畳に落ちた自分の刀を手繰り寄せた。
そして男に刀を渡そうと手を伸ばす。

何を、している?



『ーー殺してくれ。』



ヒュッと喉がなるのが分かった。

俺も、局長も隊士も、男も、全員が目を見開くのが分かった。


絶望に染まったアオイの瞳。
苦渋に歪められたアオイの顔。
どうしたら、彼女は、ここは元に戻るのだろうか。









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