ILY 日常篇

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時は二月十日
街は愛だチョコだピンクだプレゼントだと盛り上がっている頃。

真選組医療方隊長兼副長補佐の工藤アオイは街の事など気にも留めず書類にかじりついていた。
もともと、アオイはそういう事__つまり色恋沙汰__に興味がないのだ。
まわりを虜にするくせにそれは無意識で、
相手の気持ちにも気付かずにひたすらまわりの淡い恋心を誘う。
無意識の無自覚だからどうしようもないのだが。

まあ、ようするに、
今回のバレンタイン、彼女からのチョコに期待する者は沢山いるけど張本人は渡す気ナシ。

そんな彼女のもとに一本の連絡が入った。


『はい、もしもし?』

[あ、アオイ姉、私神楽アル!
今姉御とでにいずにいるネ。
それでちょっとアオイ姉にも来て欲しいアル。
待ってるからネ!!]

『…………。』


一方的な電話にアオイは暫らく携帯を見つめた。

まだ、子供な神楽だし、仕方ないのかもしれない…。
仕事、どうしよ……。
帰ってからでいっか、急ぎじゃないし…。

悶々と考えた末、アオイは隊服の儘歩いてでにいずに向かった。



でにいずにつくと神楽が私に気付いて手をふった。


神楽「アオイ姉ー、こっちアル!!」


大きな声で叫びながら……。
銀時、しつけがなってないぞ。
(俺、関係無ぇし…。by.銀時)


『神楽、お妙こんにちは。
神楽、あんまり店で大きな声出すなよ、他のお客さんの迷惑になるからな?』

神楽「分かったヨ!!今度から気をつけるネ。」

お妙「それより、アオイさん、もうすぐバレンタインですよ!!」

『う、うん?
でも、2人も好きな人はいないんだろう?』

「「うん/はい」」


理解できない。
好きな人が居ないならバレンタインなんて関係のない行事なのに。
なのに、なんでふたりがそこまでテンション上がってるのか私には分からなかった。


神楽「友チョコアル!!」

『友チョコ??』

神楽「そうネ。
仲のイイ友達どうし交換するアル。
他にも家族にあげるファミチョコ、仲のいい男友達にあげる義理チョコ、自分にあげるご褒美チョコがあるネ!!
だから、私と姉御とアオイ姉で友チョコ交換したいアル!!」


へぇ、そんなのがあるのか。
てっきりバレンタインは恋人だけの行事だと思ってた。


『うんいいよ、やろうか、楽しそうだな。』


そう返事をしたら、神楽とお妙は凄く嬉しそうな顔をした。


妙「あ、そういえばアオイさん、
銀さんや真選組の皆さんにはあげないんですか?」

『え?いや、今まであげた事ないし。
今年も特に考えてないけど?』

妙「んー、今年はあげてみたらどうですか?」

『…うん、でも私に貰っても困らないか?
ほら、彼女とか。』

妙「大丈夫ですよ、きっと。
だから、今年はあげてみたらどうですか?」

『そうか、じゃあ、今年は渡してみるよ。』

妙「はい、頑張ってくださいね。
(良かったですね、銀さん。
真選組の方達も分かりませんけど、きっとアオイさんの事大切に思ってるんでしょうね。
アオイさんを取られるのはイヤだけどバレンタイン位なら許してあげましょうね。
アオイさんに貰った時の反応が気になるわ、ふふ。)」


はじめてバレンタインチョコを作るな。
どんなものを作ればいいんだろうか?

暫らくしてから神楽、お妙と別れた。
何を作ればいいか分からないし、
料理はするけどお菓子作りは初めてだから本屋に寄った。

本屋のトップはやっぱりバレンタイン特集が掲示されていた。
ぴんく……。
なんだか変な感じだな。
今まではバレンタインにキャピキャピはしゃいでいる女の子達をみて私には絶対こんな事にはならないと思っていたのに。
いや、別にはしゃいではないけど、なんて言うかこのバレンタインの本を買うとか、材料買うとかなんか夢にも思ってなかった。

へぇー、こんなに色々あるんだな。
何を作ろうか?
何がイイか聞けば早いけど神楽とお妙が「この事は内緒で」って言ってたから聞けないし……。

んー、あ、これ美味しそう。
えっと、がとーしょこら?

《超濃厚★超簡単★ガトーショコラ
__初心者でも本格的なガトーショコラが作れます。
一度に沢山作れるので生産的!!__》

うん、よさそう。
でも、バレンタインの本に生産的とか現実的な事を書かない方がイイと思うんだけどな…。


ま、兎にも角にも私工藤アオイの初バレンタインが始動したわけです。




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