黒バス

□私の全て…
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―――キイィィィィ…!


ある晴れた日のお昼前

ソレは起こった


その日の夕方のニュースでは


【信号無視の事故、少女命に別状は無し】

その見出しに続けられた説明は

本日未明、信号無視の車が少女を撥ね
少女は意識は戻らないが命に別状はない





―――――――――――
――――――――
―――――
――

ピ、ピ、ピ、…

規則正しい音が響く真っ白な部屋



そこで眠る一人の少女

その隣には少女と同じ年ぐらいの少年



少年は少女の手を握り絞め

祈るような眼差しで少女を見つめた




早く、早く起きてください―――…

何時まで、僕を一人にするんですか

貴女が居ないと僕は――…




握り絞めていた手に力を加える

ギュ、

何時もなら痛いよ、と言ってくるのに

何も言わないなんて…



今まで我慢してきた涙が溢れそうになる

それでも涙を流させまいと

下唇を噛み締めた


――――
――


握っていた手が微かに動いた

ということは…


「澪!?」


そこには目を瞑ったままの幼馴染


「何で…早く起きてよ、僕は…!」


我慢の限界に来たのか涙がポロポロと溢れだした


「澪、澪!」

「…」


黒子の言葉に反応するかのように

再び、ピク、と動いた


「澪、早く起きてよ」

「…、て…つ…」


蚊がなくような声。けれど聞き取れた

彼女は今、自分を呼んだ


「澪、そう、僕だよ!」

「…、て、つ…テツ…」


ゆっくりと瞼が上がり

幼馴染が視界に僕を映す

「テツ…ここ…」

「ここは病院だよ、澪は…!」

「…そっか、私…」

「だ、大丈夫なの!?」

「、テツ、敬語崩れてるよ」

私としてはその方が良いけど

そんな事が言えるくらいには大丈夫なんだと

勝手に理解した


そう、勝手に…


その後直ぐに

ずっと先生と話をしていた澪の両親が来て

澪の母親は涙を流しながら抱き締めた

澪の父親はその瞳に涙を溜めて喜んだ


「澪、良かった」

「お父さん、お母さん、私は大丈夫だよ」


何に対してかは、分からないが

今の澪の言葉を聞いて目を見開き又も涙を流した


「澪、よく聞いて」


幼馴染と言えど聞いてはいけないような気がして

ソッと出ていこうとすれば

澪の父親にソレを止められた


此処に居ろと言われた

これから起きる事を受け入れろ

そう言われたような気がした


「澪、よく聞いて?」

「お母、さん?」

「あのね、澪はもう、――――


―――――――なのよ…」

「は、ぇ?何、それ…!」

「っ、本当なの、本当なのよ…」

呆然とする澪と

止めどなく涙を流す澪の母親


ソレを何処か遠くから見ているような感じだった自分


何で澪が…!


運動が好きで、走るのが好きで、スポーツが好きで…

何より、バスケが好きで


そんな澪なのに

よりによって…―――――






―――…足に後遺症が残るなんて…――――






澪は時間がたち、漸く事を理解したようで

叫びながら涙を流した


――――――――――
――――――
―――


それからの澪は

正直、見ていられなかった


1週間の検査入院が終わり

漸く自宅に戻れたが


その間ずっと澪は涙を流し続けた

何で、どうして…


当たり前だ、澪は被害者だ

信号無視の車に撥ねられ

相手は謝罪とそれっぽっちの謝礼金を渡し

さっさと警察の元へと行ってしまった



――――――――
―――――
――


澪は心がぽっかりと空いたように

ボー…と見るに耐えないほど腫れた目で虚ろな表情をしつつ

また思い出したのか涙を流す


そんな日々を繰り返していた


僕はそんな澪をずっと傍で見てきた


ずっと、ずっと…


もうこれ以上

澪の涙は見たくなかった

だからこれはきっと…






「澪、僕に…バスケ、教えてくれませんか?」




そう、これは必然だったんだ




僕の言葉に驚きつつも

涙は止まってくれたみたいだから

少しホッとした




これからは、僕が貴女を守ります





そう決意した小学2年の夏







END

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