黒バス

□…えっ!?
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「はい、オッケーです」

「ありがとうございましたー!」

――――――
―――


「涼太、今度の日曜だが、ある雑誌の専属モデルとの仕事だ」

「?はいっス」

「たしかお前と同い年だった気がする」

「マジっスか!?」

「ああ、じゃあ頼むよ」


――――――――
―――――


「はい、オッケー!今日も可愛かったよローズちゃん!」

「ありがとうございます!あの、なんでローズなんですか?みんなに言われるんですが…」

「あぁ、キミのファンが青く長い髪と凛とした表情が青いバラのようだ、ていってた」

「それで、ブルーローズて言われてるんですね…」

「不服?」

「あ、いや、そういうんじゃなくてですね、ちゃんと――――として見てほしいっていうか…」

「大丈夫!ちゃんと―――ちゃんのこと見てくれてるよ」



――――――――――
――――――


「あーあ、マネージャーはああ言ってたけど同い年の女の子だったらなぁ…
 どーせ…――――…」



――――――――
―――――

「あ、そういえば―――ちゃん、今度の日曜はね人気モデルと一緒に撮影するわよ!」

「?誰?」

「それは当日のお楽しみよ!
 じゃあ楽しみにしててね紗希ちゃん」

「えぇー?」


―――――――――――
――――――――


日曜かー

部活は…そう言えば無いな、良かった

てか結局相手聞いてないや

「誰だろーなー」

「何が?」

「あ、澪ちゃん」

「ねぇ、どうしたの?」

「あ、あのね今度の日曜にね、人気モデルと一緒に仕事するんだって」

「?何でモデル?」

「アレ?言ってなかった?」

キョトンと首をかしげる紗希

「え、何も聞いてないよ!?」

「アレ?私、モデルやってるんだよ?」




「えぇ!?」


紗希の発言に驚く澪

「あ、モデルって言っても黄瀬くんみたいなのじゃなくて…」

「なくて?」

語尾を濁し言いにくそうにしている紗希に澪は聞き返す

「、じゃなくて、えと、ゴスロリっていう類いのモデルをしてて…」

「ゴスロリ?あのフリフリしたドレス?」

「ぅ、うん、そうだよ、笑う?」

「え、何で笑うの?凄い事じゃないの?」

「え、凄い事なの?」

「え、だってそうじゃないモデルって素敵な仕事でしょ?
どんな衣装を着ていてもその仕事自体が凄い事なんだから笑うなんてことしないよ!

寧ろ尊敬するよ!だって部活にモデルだよ?」

「え、そうか、な?」

澪の言葉に紗希は少し頬を染める

それほど嬉しかったのだろう


「まぁ、ちょうど部活ないから仕事頑張ってね」

「うん、ありがとう澪ちゃん!」




―――――――――――――
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――――――


コツコツと少しヒールの高い靴を響かせ

ただまっすぐ歩く小さな少女

少女はある場所で歩みを止め

深く息を吸い、そして吐いた

そして、よし、と心で叫び

下していた顔を上げ、目の前の建物へ入っていった


見慣れた場所

見慣れた空間

何時もと何ら変わりない筈なのに

何時もよりもドキドキしている

結局、人気モデルって誰何だろう…


いつも通りの用意を済ませ

今日の撮影内容を聞く


今回は人形とその持ち主を主体としたものらしい

私が人形のような操り人形のような…

まぁ、そんな感じで

持ち主ってのが人気モデルらしい


てか遅いな、人気モデル


なんかカメラマンさんはニヤニヤしてるし

マネージャーもなんかアレだし…


ムムム…と悩んでいたら元気な声が響いた


「今日はよろしくお願いします!」

やっとか…そう思いながらその顔を拝んでやろうと振り返ると見慣れた顔

え、ちょ、なんで、なんでこの人が…!


「なんで此処にいるの!?」

「なんで此処にいるんスか!?」

同時に叫んだ私と見慣れた黄色のモデル

黄瀬涼太が目の前にいた

は、え、ちょ、マジで待って

お願いだから待ってください

「おぉ、彼と知り合いだったのか紗希ちゃん」

少し驚いた表情をしてるカメラマンさん

とその隣にニヤニヤ顔のマネージャー

絶対あのマネージャー知ってたでしょ

「いや、知り合いっていうか同じ学校の部活仲間で…」

「へーなら今日はやりやすいのかな?」

「いやいやいや、ちょっといいっスか!?」

「?どうしたの?黄瀬くん」

「いや、俺紗希っちがモデルやってるなんて聞いてねースよ!?」

「うん、だって言ってないもん」

「ヒドッ!」

「いや、だって大ちゃんとさっちゃんしか知らないし」

「え?澪っちは!?」

「澪ちゃんにはこの前言った」

「親友なのに!?」

「言ったものだと思ってたから」

「そうっスか…まぁいいっス」

「うん、だから今日はよろしくね?」

「こちらこそよろしくっス!」

私たちのやり取りが面白かったのか

周りからはクスクスと笑いが聞こえる

良い雰囲気だな、て思う

でも、今日はもっと凛としたテーマだよなー


――――――――――
――――――


「はい、良いよー」

「そのままー」

「…よし、一旦休憩です」


スタッフさんの掛け声でフー、と一呼吸付き

黄瀬くんに話しかける

「お疲れ様」

「あ、紗希っちもお疲れっス」

「よくこの仕事引き受けたね」

「え、まぁ部活ないし暇だし…」

「でも黄瀬くんはこんな撮影初めてでしょ?」

「まぁ初めてっスけどこれはこれで楽しいっスよ!」

「そっか…なら良かった」

「てか紗希っちもモデルやってたんスね」

「え、うんまぁ…」

黄瀬の質問に言葉を濁す紗希

あまり聞かれたくない内容なのだろうと

別の話をしようと話題を探していたら

紗希がポツリぽつりと言葉をこぼした


「お母さんがね、ホラ、大ちゃんがバスケ馬鹿でしょ?
 だから私もバスケが大好きでね
 でもお母さんは私に女の子らしいことをしてほしいみたいでね」

ゆっくりと発せられる心地いい声色に耳を傾ける

「でもね、お母さんは優しいからバスケをしちゃダメだとは言わなかった
 かわりに髪は切っちゃダメ、て言われたけど」

「でもね、それでよかった」

「けど、ある日出かけてたらスカウトされちゃって…」

「え、それっていつの話っスか?」

「えっと…確か小学…2年生ぐらいのときかな」

「え、そんな昔からやってんスか!?」

「え、うん…お母さんは断るつもりだったらしいんだけど
 内容がすっごい女の子らしい衣装だからね」

「ああ、快く承諾しちゃったんスか」

「うん、まぁそういうことだね
 だからそれからずっとここで働いてるよ」

「へぇー…すごいっスねー」

紗希の話を聞いた黄瀬は

感嘆の声を上げた

「だって自分からしようと思ったわけじゃないんスよね?
 なのにこんな続けられるとか流石としか言えないっスよ」

素直にほめられたことで少し頬を染めるが

薄く塗られた化粧だがそれを見ることはできなかった

しかし黄瀬には紗希が喜んでいるのがわかり

あぁ、可愛いな

と妹を見るような目で見ていた



――――――――――――
――――――――


撮影は続き

漸く終わりを迎え

黄瀬と紗希は2人でスタジオを後にした




「ねぇ黄瀬くん」

「何っスかー?」

「今日、楽しかったね!」

「はいっス!紗希っちの事もっと知れたし
今日はいい日っスよ!」

「うん、私も黄瀬くんとお仕事出来て楽しかったよ!」

「またやりたいっスね」

「うん!今度は黄瀬くんい合わせてしたいな!」

「いいっスね!デート特集とかっスか?」

「えーそんな事したら黄瀬くんのファンになんて言われるか」

苦笑いの紗希に笑顔の黄瀬

他愛もない話をしつつ笑顔の2人

そんな2人の身長差はすごかった


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――――――――


「あ、ねぇ大ちゃん聞いてー」

「あ、どうした?」

「あのねー今日は黄瀬くんと一緒に撮影したんだよ!」

「あ?…あーそういやアイツモデルだったな」

「うん!楽しかったよ」

「そーかそりゃよかったな」

「うん!」



―――――――――
―――――

ピロピロ…


「…え、涼くんと…

 フフ、楽しそうでなによりです」







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―――――――



また撮影したいね!

っス!









END
 

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