黒バス

□幼き頃
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「ひっく、ひっく、うっ…っ、」



しゃくりあげながら泣く小さな少女が一人



夕焼けのオレンジに染められた公園に居る



その公園には少女の他には人などおらず


ベンチにぽつんと蹲るように座り、泣いていた



少女の髪は青く、そして長く、美しかった







――――――――――――――――
―――――――――――



「―――…クソッ―」



誰かが吐き捨てるように呟いた



褐色の肌と青色の短髪をした少年があたりを見回すように走る



少年は何かを探しているようだった



さて、その探し物は――――…




―――――――――――
――――――――――――――――



ダムダム…


どこからか音が聞こえる


この音は…ボールを弾ませる音?


誰が…



「大ちゃん――…!」


少女は目を赤く腫らし、音源の元へ急いだ




――――――――――――――――
―――――――――――



ダムダム…


どこからか音が聞こえる


この音は…大好きなあの音



誰が…



アイツを探さなければいけないのに


足は、身体は…勝手に音源の元へと向かっていた



―――――――――――
――――――――――――――――


ダムダム


ボールを弾ませる


グッと踏込み、ジャンプし、ボールを投げる


ボールは虹のようなアーチを描き


ゴールネットを揺らした



「ふぅ…」


息を吐き、転がったボールを拾う


夕焼けに染まるこの場は


誰も人が居ない、ストバス



近くの公園にある大きな時計が見える



そろそろ帰らなければ心配される


あと少し…と決めて


再びダムダムとボールを弾ませる




――――――――――――――――
―――――――――――


ダムダム


音はだんだん近付いている


あそこは…


大ちゃんとバスケをした場所だ!


大ちゃん、大ちゃん、大ちゃんがあそこに!



目を見開いたのが解った


誰?大ちゃんじゃない…


貴女は、誰…?



―――――――――――
――――――――――――――――


ダムダム


ボールのバウンドす音がまた始まった


音の方へ向かって、驚いた


お前は、誰だ?


女のくせにボールを操るのが上手い


学校で俺より強い奴なんて上級生にしかいない


けれど、アイツは、目の前でボールを操っている女は


俺と同い年ぐらいに見える


お前は、誰だ…?




――――――――――――――――
―――――――――――



グッと力を込め、もう一度ボールを離す


スパっ、そんな音をたてて


ゴールネットを揺らした


どこからか、視線を感じる気がする


あたりを見回せば、一人の髪の長い女の子


誰?もしかして、バスケ、したいのかな?




もう一人、男の子を見つけた

褐色の肌で青く短い髪


あの女の子と髪の色、似てるなぁ


気にせずまた、シュートを決めた



―――――――――――
――――――――――――――――



女の子は、大ちゃんのようにきれいにシュートを決めた


凄いなぁ


でも、誰なんだろう、ここには何度も来てるけれど


あの子をみたことはなかった


女の子に見入っていたが


不意に視線をずらせば見慣れた青



「大ちゃん!」



――――――――――――――――
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「大ちゃん!」


女のプレーに見入っていたら突然聞こえた聞きなれた声


「紗希!」


探していた俺の双子の姉が走ってきた


「会いたかった!」


抱き着いて泣きだした紗希を抱きしめ返し

頭を撫でれば、ふにゃりと笑った


目を先程の女に移せば


不思議そうにこちらを見ていた





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「大ちゃん!」


突然女の子の叫び声が聞こえた


「紗希!」


男の子の声も聞こえた


あぁ、やっぱり兄弟だったんだ


先程の2人をみて、そう思った


あ、幼馴染、心配してるかなぁ


男の子と目が合って、そう思った




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紗希を泣き止ませて


女の元へ行った


「お前、バスケ上手いな!」


素直な感想を口にすれば


目を丸くしていた


?俺、何か変なこと言ったか?



「…ありがとう、貴方もバスケ、するの?」


女が少し笑いながら言った言葉に俺もつられて笑う


「おう!」



「じゃ!じゃあ、一緒に、しない?」


「マジか!やろうぜ!」


紗希を離れさせ、女と向き合う



「大ちゃん、頑張れっ」


紗希の応援が聞こえた




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男の子は、強かった


同い年ぐらいで私のドリブルについてこれる人なんていなかった


ドキドキ、わくわく、


今、すごく楽しい!



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スゴイ…!


同い年ぐらいの子で大ちゃんと張り合える子なんていなかったのに!


あの子、すごく強い!


大ちゃんが押されてるなんて



女の子はドライブで大ちゃんを抜こうとしていた


けれど、大ちゃんだって負けてない


追いついてブロックした


女の子は、数歩後ろに下がってシュートモーションに入った


大ちゃんはそれに追いついてジャンプしてブロックした


これは大ちゃんの勝ち!



…そう思ったのに、



女の子はジャンプしたまま身体を後ろに反らし


そのままボールを放った



ボールは綺麗にゴールへと吸い込まれた



何、あの子…!



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な!


そんなの、アリかよ!?


身体、反らすなんて誰が考えんだよ!


しかも、お前、反らし過ぎだろ!


何だよそれ!



着地してふぅと息を吐く目の前の女を見て


笑わずにはいれなかった




「ハハッ…お前、凄すぎだろっ!」



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強い、ただそれだけ


だから、本気を出した



男の子に


スゴイって言われた


強い子に言われると、素直に嬉しい


「もう一回しようぜ!」


男の子の言葉にうん、頷こうとした


…けれどそれはできなかった


視界に、見慣れた水色が見えたから



「…ごめん、もう帰らなきゃ、ゴメンね」


バイバイ



男の子も女の子もポカーンとしていた


けれど今すぐ帰らないと私が怒られてしまう



でも、2人にはまた、何時かまた、



会えるような気がする



―――――――――――
――――――――――――――――



「なんだったんだ?」


突然帰ると言い出した女



「大ちゃん」


紗希の言葉にハッとする


「紗希…」


「今の子、すごかったね」


すごく、強かった


紗希の言葉にあぁ、頷くことしかできなかった


また、アイツとバスケがしたい





そのために、アイツがやったあの技を、覚えようと思った



















そんな幼いころの思い出











END


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