黒バス

□だよね
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  「そんなバスケ、

         楽しいの?」




ボソッと口からこぼれた言葉



隣にいた紗希には聞こえていたようで




「どうしたの?」




よかった、内容は聞こえてなかったみたいだ




「ううん、なんでもない」



「?変な澪ちゃん」




そういって視線を試合中の彼らに移した




彼ら…帝光中バスケ部



今はIHの準決勝



相手は決して弱くないはずなのに



点差は歴然としていた




その点差は64点



ガコッ、また点差が2点開いた



青峰大輝がダンクをした






――――――――――
――――――――――――――




ブザーが鳴り響いた


結果はやはり、帝光中の圧勝






パチパチパチ


嬉しそうに拍手をする紗希



それを少し切なそうな悲しそうな表情で澪は見る



確かに彼らが勝利したことは嬉しい




けれど…


こちらの応援席には



帝光中バスケ部のスローガンである



   百戦百勝






はぁ…ため息ひとつ





「さぁ、早く帰るぞ」


「あーめんどくさ」


「今日のやつら、ゆーほどのやつじゃなかったな」


「フン、人事を尽くした結果なのだよ」


「ちょ、もっと俺にパスしてくださいよ!」




とても準決勝に勝利したとは思えない



勝利を当たり前としている彼らには


たかが準決勝、と思っているのだろうか




そんな勝利、何も得られないだろうに







「ちくしょう…」



「うっ、うゎっ…」



「泣くな!泣くな!この悔しさを次につなげるんだ!」



「でもっ、でもっ…!」



「…っ、…」





それを考えると



彼ら(敗者)の方が得られたものは大きいのかもしれない








そんなの、そんなの…






ギュッと固く握りこぶしを作る人が一人





澪はそっと両手をその人の右手に伸ばした





「…澪、さん…」



ニコッ、苦笑いを含んだ乾いたような笑い方をする澪





大丈夫、きっと、わかってくれる






  「そんなバスケ、
      
         楽しくないよ」







ただの勝利こそ不必要なものはない


何かを得られてこその勝利だ




だから彼らは…





「それがわかるまで、永遠の敗者だ」





私の中で―――――…




そう澪は


幼馴染の手をギュッと握りしめ、呟いた













END
 

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