黒バス

□天才少女
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ダムダムとボールを弾ませる



ボールを両手で持ち


ゴールの前でグッ、と構える



そして、ひざを曲げジャンプし


ボールをゴールへと放つ



ボールは、綺麗な放物線を描きながら


シュッ、と小さく音を鳴らし


ゴールネットを揺らした



ボールは地につきバウンドを繰り返す


やがてコロコロとどこかへ転がる



それを少し苦い顔をしながら見ている少女



ボールの転がる先を見ながら

自傷的に笑い、視線を自分の足へと移す




痛みは無い


けれど、依然のように軽い感じがしない





もう一度ボールを手に取り


シュートする



スパっ――…



綺麗に決まる




はぁ…



ため息を一つ溢せば


パチパチパチ…


奥から突然拍手が聞こえる


そちらへ急いで振り返り、目を丸くした



「やぁ、流石だな」


「…、別に、これぐらい普通なんじゃないの?」

バスケ部主将さん


見られていたことにより

焦りや苛立ちが生まれ、嫌味ったらしく言う


「…言葉を間違えたか?」


「何が良いたいの?」


「…天才少女」


その言葉を聞き目を見開き動きが停止したのが分かった


「天才少女、白川澪。
 ゾーンに愛され、自分の意志でゾーンに入ることができる



 しかし、数年前。不慮の事故で両足に後遺症が残る」


私の過去を淡々と語るりながら近付く赤



「まぁ…その後遺症は、事故だけのせいではなく」


身体ができていないのに
その力を使い過ぎたのも原因だな




そう薄く笑いながら目の前に立つ


「…だから?赤司くんは何が言いたいの?」


「そうだな…澪、1日どれくらい運動できる?」

もちろん本気で


そう付け加えた目の前の男に


どうしようかと悩むも

どうあがいても結果は変わらないだろうと思い

真実を口にする



「1日…20分が限界…」


「ゾーンを使用すれば?」


「…事故にあってから1度も使ってない。
 だから、どれくらい使えるか以前に」

使えるかもわからない


そう伝えれば、考え始める赤



「そうか…じゃあ…」


そういって制服のブレザーを脱ぐ赤司くんに声を上げる


「まさか…!」


「あぁ、もちろんだ」


俺と1on1をするんだ


平然と言ってのけた



もうこの男に何を言っても意味などないのだから


大人しく従おう



「さぁ、始めるよ」


ボールを持っているのは赤司くん


つまり、赤司くんが先行で攻めてくる



ダムダムとバウンドさせ、タイミングを計っている赤司くんに

隙を作らず赤司くんの動きをみつめる



刹那



静まり返った空間が


一変して変わった


どうやら赤司くんは私に手加減をしてくれないようで

流石強豪帝光中バスケ部主将だけはある

キレのある動きでボールを弾ませながら私の横を過ぎようとする



けれど



「っ、そんなに甘くないっよ!」


キュッ、とスキール音を鳴らせ素早い動きで赤司の前に立つ澪


「ふっ、流石、だな…だがっ」


先程より速いドライブで澪を抜く



澪はニヤァと笑い



そして



次の瞬間



ボールは澪の手の中にあった



「…私の勝ちだね」



赤司と向き合いそう笑いながら言えば


赤司もつられて笑う


「へぇ…ホント、流石だな」


攻守交代だ


そう告げ、先程とポジションを交代する



ダムダムと2、3度バウンドさせ

ボールを両手で持ち

赤司くんと向き合う


…やっぱり、赤司くんに隙はない

どうやって攻めようか…



「本気を出さないわけがないよね?」


「…良いんだね?本気だしても」


「もちろん。悪ければそんなこと言わないさ」


「あとから文句言っても知らないから」


こうなればもうどうとでもなればいい

深く深呼吸をして落ち着かせる


深呼吸と同時に目を閉じ


落ち着いたらゆっくりと目を開ける


視界に入るのは


白と黒で出来た世界


あぁ、あのゴールを狙えばいいのか







――――――――
――――――――――――



一瞬だった


目の前で落ち着こうと目を閉じ深呼吸をする澪

目をゆっくり開けるから

こちらも集中してDFに専念する


目と目があった


目の前の澪の瞳からは

白い線のようなものが見える気がする


聴いたことのある


『ゾーンに入ったもののあたりは空気が変わる』


この場合、空気というより

雰囲気が変わった、という方が正しい


これが、ゾーン




澪が1歩踏み出した

その前へ行こうとした


けれど、行けなかった



僕がDFに行くより先に


澪は僕の横をドライブで抜いた

振り返り走り出そうと1歩踏み出せば


時すでに遅し


澪はボールをゴールへと入れた


入れた。この言い方が一番正しい



こちらをみた小さな少女は


俺より小さくて、俺より細いのに


澪はその小さな身体で

はるか高くにあるはずのゴールへ手を伸ばし

ダンクを決めた




「ふぅ…これで良いかな?赤司くん」


あぁ、やっぱり…





――――――――――――――
――――――――――



「面白い」


赤司くんからの返事はこれだった


不味いかもしれない


嫌な予感がしていたがそれは的中したようだった


「澪、1日5分だ」


「え?何が?」


「ゾーンに入れる時間だ」


「…それは、なんて言いたいの?」


「…澪、バスケ部のコーチになれ」


「、は?こーち?私が?」


何を言い出すんだこの男は

私がコーチ?無理に決まってる


「あぁ、俺たちの指導…指摘をするんだ」


「…どうして赤司くんはそう思った?」


「そうだな…強いて言えば澪が強かった。それだけだよ」


「強かった?私が?」


「あぁ、現に俺に攻守ともに勝った」


まぁ、2回目は澪に勝ち目はないがな…


…だから澪と戦うことで各々自分の弱点に気付ける


そう思ったと、彼は続けた


「…それは、別にコーチじゃなくてもいいんじゃないの?」


「あぁ、そうだね、コーチは後付けだ」



…どうやら、目の前の赤は認めるまで引かないようだ


この男に何を言っても意味がないことなどわかっている


「はぁ…解った。ただし、1日20分が限界だからそれを考えたうえでメニューを考えてよね」


「あぁ、もちろんだ」


よろしく頼むよ、澪


そういった赤は怪しく笑っていた







―――――――――
―――――――――――――





「澪、これから俺たちの成長の要だ」


「天才少女の名を与えられたんだから」


「期待はずれなことは許さない」


「…まぁ、実力は認めよう」


「大切なのは、これから…」


「天才少女、白川澪…」



俺の予想を凌駕することを願ってるよ








END


NEXTおまけ やたら長いけど
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