+ SantaClaus is coming to me! + (Minato)

□A話
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クリスマスプレゼントっていっても、男の人って何が欲しいんだろう。
よく分からない。
だって、男の人にプレゼントなんてしたことないし。


変なものあげて、変な子だと思われたくない。
嬉しくないものをあげて、嫌われたくない。


あわよくば、さすが名無しさんだね!って思ってもらいたいと願う欲深いわたし。




プレゼントくらい、ちゃんとリサーチしなくちゃね!




と、意気込んではみたものの。


いざ調査を始めると、四代目のプライベートはひどく謎めいていた。
数日の調査の結果得られたのは、お昼によく行く定食屋さんと一楽によく出入りしていることだけ。
どっちも食べ物関係で、プレゼント出来るものじゃない。


趣味とか、何なんだろう。
火影さまだから、自分の時間なんて殆どないんだろうなぁ。




気付けば、四代目のことばかりが頭を支配している今日この頃。
お昼は、四代目の好きな定食屋さんで毎日過ごしてる。


お母さんの味。
こういうのが好きなんだ、四代目。
作ってるのはおじさんだけど。


カウンターの中で働く小柄なおじさんをチラリと見ると、にっこり笑顔を返してくれた。
愛想笑いを返し、注文した煮魚を突付く。




「こんにちは!」


ウワサをすれば(わたしの脳内)。
お昼より少し遅れた時間に、四代目が入ってきた。


わたしはお店の奥のテーブル席。
四代目は、入口近くのカウンター席に腰を下ろした。
いつでも呼び出しに対応するためかな、さすが。




おかげで四代目はわたしに気付いてない。




でも、四代目はひとりだし、何を頼むかくらいしか分からない。
連れがいたら、会話を盗み聞きするのに。




身を縮めて、気配を潜める。


おお、会話聞こえる。
お店のおじさんと四代目の会話。


ラッキー!
行き着けだし、気さくな人同士、談笑するよね。




幸い、店内にお客さんはまばら。
みんな食べるのに夢中で、店内は静かだ。




「このお店もきれいに飾り付けてますね」


「娘がね、やるって聞かなくて」


「クリスマスっぽくて、わくわくしますね!」




和風の店内には、少し違和感のあるクリスマス装飾について話してるふたり。
うんうん、クリスマスの会話は助かる。




「四代目は?クリスマスの予定はあるんですか?」


おじさんの質問に、なぜかわたしの胸が大きく跳ねた。
なんて答えるんだろう。


妙な間も気になる。




「まだ決まってないですよ。どうなるか」




えっと、それはわたしが曖昧な返事しかしてないから...ですか?




「でも、家でゆっくり過ごせたらいいなぁって思ってます」




家で、ゆっくり。
頭のメモに書き込む。


わたしの路線は、的外れじゃなかったみたい。
お料理の練習も、今まで以上に頑張らなきゃ。




「家で御馳走を食べるのも、いいクリスマスだねぇ」


「特別なものはいりませんよ。ただケーキはあるといいですよね。クリスマスらしくて」


「それなら予約しておかないと」




ケーキの予約ははっちりです!四代目っ!
心の中で会話に加わって、ぐっと箸を握り締める。


手探りだったけど、方向はやっぱり間違ってない。




「んー...というよりは、手作りケーキがいいかなって」




手作り...ケーキ...。




「それはまたハードルが高いですね」


「ん、そうですね。多くを望みすぎるのはよくないですよね」
でも、と言い淀んだ四代目。




なぜか見られていないはずのわたしの中枢が、びくりと反応した。


あれ?気付かれた?
いや、まさか。




「すごく簡単なものでも、すごく不恰好でも、一生懸命作ってもらえたらすごく嬉しいなって」




その笑顔を見せて欲しいの。
プレゼントも、お料理も全部、この笑顔が見たいための努力。




殆ど味わえないまま、考え事をしながら食事を終えて、外へ。
まず向かったのは、ケーキ屋さん。
予約を取り消してもらわなきゃいけないから。


それから、本屋さんへ。
このあいだ買った料理の本じゃケーキはカバー出来ないから、ケーキ作り専門の本を買うために。


なんだかんだで、四代目に振り回されてる。


でも、不思議と楽しくて、24日に向けてわくわくしてる自分がいた。






で、取り急ぎ解決しなきゃいけないのは、わたしの料理の腕前。




材料を揃えて作ってみたものの、情けないほど潰れたスポンジがオーブンから出てくるばかり。


「あれ?」


何が悪かったんだろう。




プレゼントにするくらいだから、立派で、見栄えのいいケーキを作りたい。
それでいて、おいしいのが前提のケーキを作り上げなきゃいけないのに。


とにかく、練習しないと。


あの笑顔を見たくて、強引に奪われた予定のために一心不乱にケーキ作りを繰り返した。













「ん...あ、れ?」



ケーキ作りに夢中になりすぎて、朝になっていた。
最近、毎日がこんな調子で過ぎていく。


任務を終えて  泊まりとかハードな任務がなくてよかった  ケーキの練習をして、気付けば朝。




どうしてだろう。
お料理は苦手じゃないし、簡単なものならすぐに出来る。
24日に向けて作ろうと思っていたごちそうだって、そんなに難しく感じなかった。


それなのに!!


ケーキだけはどうしても出来ない。
毎回スポンジはしぼむし、生クリームは変な甘さだし、デコレーションに至っては壊滅的。


これじゃ、24日までに四代目を笑顔に出来るようなケーキを作るのは不可能   




24日までに...。


ん?


今日って、何日?





徹夜だったり、睡眠時間2、3時間の日が続いて、正確な日にちが把握出来ない。




確実に知るために、テレビをつける。
わたしのテンションとは真逆の明るい笑顔で、天気予報を伝えるお姉さんが映り、こう伝えた。


12月24日、今日はクリスマスイブですね、と。






どのくらいのあいだだろう。


硬直したまま動けなかった。




今日が、もう12月24日ってどういうこと?
ううん、そういうことなんだ。


あるのは、ぐちゃぐちゃしたケーキっぽいものと、睡眠不足のみっともないわたし。


夢中になるにも程がある。




どうしようもなくバカだ。




バカなわたしに出来るのは、ベッドに潜り込んで不貞寝することだけだった。
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