Fortissimo

□間章 キミヲオモウ
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「ふふ、ふふふっ」
少女は一人暗い部屋でくるくる踊る。
恍惚と、嬉しさと、喜びいろんな感情がぐちゃぐちゃになった表情で。
回る。
回る。
少女は回る。
「ねぇ、聞いてお父さん、お母さん。やっとトシキが来てくれた。帰ってきてくれた。私に会いに来てくれた」
少女が話しかけているのは遺影だ。しかし当然遺影は遺影。
何も言わない。
「私はトシキの恋人になんかならなくていいの。恋人になんてなったらいつか喧嘩して終わりだもの」
少女は遺影を指でなぞりながら続ける。
「でもね、幼馴染みとしてならずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと一緒にいられるの!それってすっごく素敵なことだと思わない?お父さん、お母さん」
少女は妖しく笑いながら再びくるくる踊りだした。
心なしか、遺影は悲しそうに表情を歪めているように見えた。

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