Fortissimo

□バランス
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何時だったか。
今と同じ夕日の空の日に桃のかかった金色の長い髪を沈む夕日に反射させながら、小さな少女が涼風の制服の裾を引いた。
『おねえちゃん、ヴァンガード知らないの?じゃあ私が教えてあげる!――遠慮しないで!助けてくれたお礼がしたいから!』



「はー……、やっといた……」
「……何しに来たの?人がセンチメンタルになってる時に……」
涼風は近所の公園でブランコに乗りながら、ぼんやりと夕日によってオレンジに染め上げられた空を眺めていた。
三和はそんな彼女を見つけるなり、声を掛けるが、当然彼女は不機嫌そうに振り返らずぶっきらぼうに返事をした。
「そう言うなって……」
「…………」
三和は涼風の隣のブランコに腰かける。
「……さすがにあれはなかったんじゃないのか?」
「それは……」
『結依、私、やっぱり櫂君嫌いだな……』
――――言ってはいけないことを彼女に言っててしまった。
そんなことはわかっている。
だが、しかし、それが涼風の本当の気持ち。それがつい口をついて出てしまった。
「あんなこと言って不機嫌そうに先輩出てくから結依、泣きそうになって心配してたぞ」
「ううう……だって、あの子、櫂君来てから櫂君櫂君ってそればっかりなんだもん……」
「だからって結依の事悲しませるようなことはするなよ?」
「わかってるよ。もう、あの子が悲しむところは見たくないから――」
そう言って涼風はブランコのチェーンを握りしめた。
「涼風」
突然、いつになく真剣な声で三和が自分の名前を(しかも呼び捨てで)呼んだかと思うと、涼風は三和に抱きしめられていた。
「ちょ、三和君!?」
「もしも……もしも、結依が櫂しか見てなかったら先輩のことあんなに心配しないだろ……」
ぎゅう、とさらに強く抱きしめられる。
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