Fortissimo

□プロローグ
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「い、行っちゃった、ね」
「騒がしい奴らだな……」
櫂は結依の隣で呆れたようにため息を吐いた。
ふわふわと桜が舞う道を進む二人。
長い沈黙の末、最初に口火を切ったのは結依だった。
「ト、トシキは、もうヴァンガードやめちゃった……?」
恐る恐る、結依は櫂に尋ねる。
「いや、まだ続けている。……その聞き方だとお前も続けてるんだな」
「だって、トシキとまたファイトしたかったもん」
「そうか」
「うん。だから、続けてるって聞いてちょっと安心した」
頬を桃色に染めながら指を組む結依。
「結依」
「なに?」
不意に櫂が立ち止り、結依を呼び止めた。呼び止められた結依も立ち止り、櫂を見つめる。
「ただいま、結依」
照れているのか、彼は結依を見つめながらも、頬を赤らめながら言った。
「お帰り、トシキ!」
結依は今日一番の笑顔で言った。





「ねぇ、三和君、あの人誰?私は見たことないけど二人とも知り合いみたいだったけど」
ようやく三和から解放された涼風は、昇降口で三和を問い詰めるような口調で尋ねた。
「幼馴染だよ。まぁ、四年離れてたから涼風先輩が知らないのはしょうがないか」
「ふぅん……。結依のあんな顔、私初めて見た……」
「先輩?どうかしたか?」
「別にどうもしない。私先行くから」
相変わらず不機嫌そうな顔でそう言って階段へと消えていった。
「……結依と櫂のこと気になってんのバレバレだっての」
彼の声は誰に届くことなく消えていった。
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