Fortissimo

□バランス
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「っ、わかってる……!」
三和がようやく涼風から離れると、にかっと笑い、夕日を背にして彼女の前に立つ。
涼風は涼風でなんとなく三和が離れたことが残念に思えてしまった。おそらく今が心細くなっているからだろう。
それでも。
――――もう少しああしていたかった。
そんな気持ちに駆られていた。
「それに、結依と櫂がくっつくようなことがあっても俺がいるし!」
それを聞くと涼風が不敵に笑みをこぼすとブランコから立ち上がり三和の前に立つ。
「涼風?」
「……後輩のくせに生意気な」
「ひっで!俺本気なのに……」
がっかりしたようにうなだれる三和を励ますように涼風が微笑んだ。
「ふふっ!でも気持ちだけは受け取っとく。ありがと!」
ふわり、と蒼碧の髪を風に泳がせ微笑む彼女に三和の心臓がどきりと高鳴る。
「でも、悪いけど私は結依一筋だから」
「いいぜ。俺が本気にさせてやるから」
「はぁ……そんなセリフ百億光年早いわよ」
ふふん、と鼻を鳴らして言う涼風。
「後年は距離だろ!」
「あほ!私とあなたの間にはそれくらい距離があるってこと!お分かり?」
再び涼風勝ち誇ったような表情で三和を見る。
「俺頭悪いからわかんないっつの!」
「馬鹿だー!」
そんな涼風の姿を見て、安心したようにつぶやく三和。
「……やっと調子戻ってきたな……」
「なんか言った?三和君」
「別になーんも」
「そう……?」
疑わしげに三和を見てから涼風は近くの平均台に飛び乗った。平均台に飛び乗ると涼風はふらふらと平均台の上を進む。
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