微笑んだジーニアス

□一章
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「こォォォォォォらァァァ!!待てチワワども!今日という今日は許さないんだから」

「・・・・・・そんなに怒っていると血管切れますよ、たいちょー」

「もぅ!逃げられちゃったじゃない!もっと走ってよ、ホーホー」

「はぁ、自分体力ないんで」

「運動部に入って鍛え直してもらってくる!?!?」

「・・・・・・遠慮シマース」

ぷんすか怒る隊長とは対照的に、冷静にスマートフォンを確認する。

まあ、逃げた奴らの顔なら チラチラこちらを見て逃げてる隙に写真撮ったし
・・・・・・あとで無記名でこっそり提出しておこう。


(馬鹿だねぇ、そのまままっすぐ逃げていればバレなかったかもしれないのにねぇ)

それでも、俺はあいつの困った顔を見たら、すぐにまた捕まえに行ったかもしれないけど。



事の始まりは、四限が終わった直後。

となりの席に座る瑪瑙(めのう)
――生徒会会長親衛隊隊長に引きずられるように校舎裏に来ると、
そこにはびしょ濡れの美青年がチワワに群がられ倒れていた。

「会長様?!大丈夫ですか!!!?」

「・・・・・・め、の・・・?」

瑪瑙が倒れている会長に一目散に駆け寄ると、伸し掛っていたチワワたちを退かし
その身の安全を確認した。

どうやら、大きな外傷は無いようである。

周りには、長いホースが水を巻き散らしたまま暴れている。

「なンなノー?だレでスか?会長様ぁ」
「やぁだぁ、見られちゃったよー。僕たちの逢瀬がーキャッ」

会長の傍から離されたチワワ達は、
不審な表情や、恥ずかしそうに頬を染ながらこちらを見た。

「”キャッ”じゃねぇよ、その汚い手でその方に触れるんじゃねぇーよブスチワワ共」

ケッ、

現親衛隊隊長様は、”黙っていれば”誰でも振り返る美形だ。

薄幸そうに見えるその顔を今は、大きく眉間に皺を寄せて吐くように言った。
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