長編

□02
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「いやぁ、いきなり押し掛けてすまない。」


「いえいえ、とんでもございませんよ。」



笑顔で話しているこの男ー シンドバッドが屋敷に押し掛けてきた理由は以下の通りだった。



視察のため、久しぶりにバルバットを訪れたシンドバッド。

その際、郊外にたたずむこの屋敷が気になり、訪ねてみようと言い出す。

従者たるジャーファルやマスルールは止めたのだが、シンドバッドは聞かなかった…とのこと。




「少々お待ちくださいね。今、茶を用意させますので。」


「ああ、すまない。」


ニコニコと気持ちの悪い笑みを浮かべ、その男は席をはずした。





「…シン、この屋敷…何か変です。」



男が席をはずした後、ジャーファルが小声で話しかける。

「…なんか、変な匂いがします。」


ジャーファルが袖で口元を隠し、マスルールは顔をしかめながら言う。
従者である二人が感じとった異様な雰囲気を、七海の覇王であるシンドバッドも感じてはいた。


「ああ…だが、確証は無い。」


そうシンドバッドが答えた時、




「ーーーーーー!!!!」



屋敷の二階からの怒号。


「シン!」

「ああ!」


声が聞こえるや否や、シンドバッド達は屋敷の二階へと駆けていった。




***


「エレン!!言うことが聞けないのか!」



『で、ですから、こんな格好では…!』

「黙れ!」


『ひっ!?』



エレンに向かって鞭が降り下ろされ、これから来る痛みにぎゅっと目を瞑った時…







鞭はエレンにあたる寸前で止まり、彼の目の前でだらんと垂れていた。




『……?』



目を開けて主人の腕を見れば、赤い紐が主人の腕を縛り、背後にいる人物に強く引っ張られているようだった。



「ぐ!?」



ようやく事態を飲み込めば、主人の腕はさらに締め上げられる。



「…どういうおつもりかな?シンドバッド王よ…」



シンドバッド。

その名に、ハッと息を飲む。



女奴隷から名を聞いた時と違い、今は目の前にいるのだ。




「人が物同然に扱われているんだ。それ以外に止める理由が何処にある。」



凛とした、威厳のある声だった。



するとすぐに赤い紐は主人の体に巻き付いて胸や腹などいろいろな部分を圧迫し、主人は気を失って倒れた。



「大丈夫か!?」



その言葉の主は紫の美しい髪を揺らしながら駆け寄ってくる。
その一歩後ろの位置に彼の従者だろうか…二人の青年がいた。



「俺はできるなら、君達奴隷を解放したい。」


一人の大柄な青年は無表情、もう一人の青年は少し呆れた表情をしながらも、口を挟むことは無かった。


「共に行こう。」



彼がエレンに手をさしのべた時、じゃらりと鎖の音がする。



『…!』


この音は紛れもない、エレンの足枷の音。



それから一気に、現実へと引き戻される。



(汚してはいけない。)



エレンの思考はすぐに回転し始め、その手をとることなくあとずさる。



これには三人も驚きの表情を浮かべた。




『来るな…!触らないでくれ…!』


エレンの一言にシンドバッド達は顔を見合わせる。


「なぜ?」



シンドバッドがぽつり、とエレンに問う。



『だって…』



エレンは絞り出すように答える。



『王様達は綺麗だろ』




「…は?」



思わずシンドバッドは間抜けな声を出してしまう。




人に突然「綺麗」と言われたのもあるが、一緒に来ない理由がそれというのは、彼らの頭の中では繋がらないものだった。




『俺は汚い事ばかりやらされてきた…。だから俺が王様達についていったら、触れたら、汚れてしまう…。』


エレンの言葉を聞いて、シンドバッドは納得する。

『他の女奴隷…。彼女達は何も汚れ仕事はやらされてないから、解放するなら彼女達を…』


「マスルール。」

「了解。」


シンドバッドとマスルールは短く言葉を交わし、マスルールはひょいとエレンを持ち上げた。


『!?』



突然の事に驚いて固まってしまったエレンだが、すぐに現状を理解し、じたばたと暴れだす。


『やめろ!離してくれ!!』



ぎゃあぎゃあと喚き暴れるが、マスルールは軽くエレンを肩に担ぎ、歩き出していたシンドバッド達についていく。




「エレン」



名前を呼び、エレンの動きが止まったのを見計らい、シンドバッドは言葉を続ける。


「彼女達も解放するさ。安心してくれ。…あと一つ、君に言いたい事がある。」




エレンはマスルールの肩越しに、シンドバッドの顔を見やる。




「自分を、汚れ物のように言うんじゃない。」


その言葉は先程主人に浴びせたように凛として、威厳のある声だったが、あの時と違い、何処か優しい声だった。









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ぐだぐだですみません…。


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