優等生の憂鬱+

□優等生の優越
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 冷泉アイコは自分の中に芽生えた感情について、戸惑いながらもそれが何なのかあれからずっと考えていた。
 
(認めたくない。でも、この感情は明らかに…)



「冷泉さん、前に出て、この問題を解いてください」


 ふと意識を現実に戻す。黒板を見ると、複雑な図形と数式が書かれていた。どうやら証明問題らしい。


「はい」


 そう一言敬礼をするように返事をすると姿勢を正し、前に歩み出て、チョークを掴むと流れるように迷わず解いていく。



 「正解!流石は冷泉さんですね。この難問を一瞬で…、よく出来ました」


 「有難うございます、先生。期待に応えられるよう精一杯努力をさせて頂きます」



 そう彼女は『笑顔』で恭しく軽く会釈をして席に着いた。
 周りの男子生徒は感嘆の声を上げて、まるで勇者のように崇める。女子生徒は苦虫を噛み潰したように、屈辱そうに彼女を見る。
 そんな視線に気づくと決まって彼女は冷笑を返した。しかし、今日は事情が違った。
 貴女達なんてどうでもいいといわんばかりに文字通り眼中に無い様で、彼女にこの葛藤を与えた件の人物――櫂トシキの横顔を密かに見ていた。
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