優等生の憂鬱+
□優等生の優越
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(この感情の正体も問題みたいに、簡単に解ければ良いのに。まさかあれではないでしょう)
ざるで水を掬っているような自問自答を再開したが、授業中だと思い直して静止した。
さらに、鋭い相手のことだから自分の視線に気づかれると感じたのか、咄嗟に机の教科書に目を向けた。
この判断は幸か不幸か的確で、どこからか視線を感じた櫂は、冷泉が教科書に目を向けたのと同時に、彼女のことを見返していた。間一髪。数秒遅ければ気まずいことになっただろう。
(…、気のせいか)
櫂は鋭い翡翠の瞳を動かすことで、視線を感じたほうを見返したが、特に変わったことはなかったとした。昨日のこともあるのか冷泉が視界に入ったとき、一瞬だけ目を止めるも、すぐに自分も教科書の方に視線を移した。
チャイムが授業の終わりと昼休みの始まりを告げた。冷泉は教室で何時ものように、独りで食事を取ろうとお弁当箱を開いた。
すると、心無い声が聞こえてくる。
「てかさぁ、いくら勉強できても友達いないとかねぇ。アハハ」
「うわっ、ひっど、ハハッ」
「まぁ、あの人が悪いんだし。気にしない気にしない!その点うちらは友達多いから良いよね」
何時もの幼稚な連中の幼稚な行為だと気にせず、冷泉は軽く無視していた。