激撮!少年少女の長い旅。
□交差、イレカワリ。
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Side/C
ヒョウタに負けた俺たちは、再戦を一時諦め、ミオシティに向かっていた。
今度こそはレベル上げも抜かりなく!
ヒコザルをメインに育てると、ヒコザルはモウカザルへと進化した。
『キィッ!』
オロオロと困り果てるかのように、赤面するモウカザル。
何故だか知らないが進化して照れ度が上がったようだった。
何故だ、進化して照れ屋に磨きがかかるなんぞ聞いたことがない。
『キィ!ウキッ!』
絶対他のポケモンに負けないよ!と宣言するがごとく、遠慮がちに照れつつも跳ねる。
ピョンピョン跳ねる姿は可愛らしく、ヒコザルの時とあまり変わらなく見えた。
しかしレベル上げも一段落したけれど……海が俺たちの前に立ちはだかった。
嘘だろ、海とか……!
ヒョウタに負けたせいで懐は寂しく、ボートなんて借りる金もない。
ちくしょう、ジム戦ひどい!
『ウ、キッ!?』
遠くに人影が見える。
そりゃそうだ、ボートを借りればミオシティに着くのだから。
恥ずかしがり度が増したモウカザルは俺の足を盾に隠れた。
すれ違う人すら恥ずかしいのか……!
隠れたモウカザルに気をとられていると(コイツ軽く呼吸困難になってるんだけど大丈夫か)
やって来た人は、すれ違うともせずに立ち止まる。
「よっ、元気そうじゃん」
「はぇ!?」
聞いたことのある声、誰だか気づけるようで気づけなくて、慌てて顔を上げた。
「おっ、オリーブ!?」
「兄さんと呼べ、兄さんと!」
ポカッと殴られた。理不尽だ。
パーカーに方手を突っ込んで俺に笑う、実兄がいた。
「何してるってか、今までどこほっつき歩いてたんだよ!?」
「父さんが『パープルは水タイプのポケモン持ってないからプレゼントしろ』ってさ。
番組を裏からサポートとか、何で俺がそんなこと……」
「愚痴はいいから質問に答えろよ」
当然のように都合の悪いことには答えない兄に、詰め寄る。
約3年ぶりの再会だというのにこの兄は、変わったのは身長くらいだ。
変わらない態度で俺に接する。
「つーわけでコレ、はいプレゼント」
「はあ!?」
モウカザルは状況を理解できずに勝手にボールに戻ってしまうし、兄の笑顔は意味深すぎるし。
「何なんだよ、もう……」
父譲りだろう強引さを色濃く受け継ぐ兄にあきれながらも。
流されるしかない俺は、ボールを受け取ったのだった。