pkmn
□苦手分野
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わなわな、と小さく震える肩には小さな人形がちょこん、と座っていた。
「変ではないと思うけど……」
当たり障りの無い返事をしつつ、肩の人形を凝視する。
もしかするとこのポケモンって、あの地方の……?
「ヒトモシ……?」
「あ、うん。本当はイッシュ地方に直で行って捕まえたいんだけど……。
そこまでするとハロウィンに、手かけすぎかなあ、と思って」
人形にしてみました、と弾けるような笑顔で言う。
語尾に『♪』が付きそうな勢いだ。
「それにしてもどうして、こんな朝早くに?」
「え?だってシルバー、いっつもどっか行っちゃうじゃない」
むう、とふくれっ面で怒るブルー。
「今日会えなきゃ、ハロウィンできないでしょう?
だからどうしても、早朝か深夜の二択になるじゃない。
深夜は日付け越したらショックだから、早朝にしようと思ったの」
さすが計画的だ。
その計画性をもっと違う方面に発揮してほしいとも思ったが、
おくびにも出さないシルバー。
「もしかして、グリーン先輩の家にも?」
「な、何よ!?グリーンの家になんか、行くわけないでしょっ!?」
こんな格好で、と憤慨する姉さん。
じゃあ俺には大丈夫なのか、と少し思うが口には出さない。
いや、来てくれたのは俺自身、嬉しいのだけれど。
「グリーンのことなんてどうでもいいのよ、どうでもっ!!」
……またケンカでもしたのだろうか。
その刹那、ブルーが両手を皿のようにして差し出す。
「…………?」
「もうっ、シルバー!
そんなんだからカノジョの一人や二人もできないのよ!?」
彼女がそう簡単にできても困りそうだ、と思うシルバー。
というかそんなことは今どうでもいいのではないのか。
ため息をぐっとこらえる。
「お菓子、頂戴」
「…………ごめん姉さん、多分俺の家にお菓子は無い」
急に言われても、姉さんの言ったとおり
ほとんどいつも、家にいないわけだし。
言ってくれたら用意もしたのに、と頭をかくシルバー。
「えっ、ハロウィン駄目だった?な、なら……御月見泥棒とか、そういうのでもいいから」
姉さん、そんなにお菓子がほしいのか……?