pkmn
□探りあい
1ページ/2ページ
「………」
「……………」
「………」
沈黙が延々と場を支配する。
あれ、おかしいな、俺ってもっとレッド先輩と普通に色々話してたはずだよな?
……何を話そう?
話題がっ、話題がないっ!
とりあえず何か無いか?
………あっ、そういやー!
「先輩」
「ん?何だ、どうしたんだ?」
「先輩って好きな人とか、いるんですか?」
探りあい
「はあっ!?」
レッド先輩が驚愕の表情で俺を見る。
うわあ、めっちゃ慌ててる……悪い気もするけれど、気にしない。
ぶっちゃけいわゆる「愛されキャラ」でモテモテなレッド先輩だけど、気になる人とか、いるんだろうか?
やっぱ俺だって気になる!
気にならないといったら嘘だ!
ジムリーダーとも2人とフラグを立てたり、イエロー先輩とフラグ立ててたり、一時期はブルー先輩ともフラグ立てていたらしいし。
いや、全部ブルー先輩からの受け売りだけど。
あの先輩の言葉は話半分に聞いた方がいいかもしれないが……気にしない。
レッド先輩なら無自覚でフラグを立てそうだし。
「いないなら……無理にこたえなくてもいいっすけど」
内心では『ここは答えてくれっ!』と叫ぶも、平然と一般意見を言う俺。
「ご、ゴールドはそういう、好きな……人とか、いるのか?」
「えっ、俺!?」
先輩答えられないからって俺に振ったな!?
ちくしょう、でもこれは……。
言うべき……だよな……。
「俺、言いますから!」
「マジで!?」
何故驚く、先輩。
にやり、とそんな先輩に笑う俺。
「だから先輩も、言ってくださいよ?」
「っ〜〜〜!?」
何だと!?と顔を真っ赤にさせる先輩。
相変わらず分かりやすい人だ。
「えと………………クリス、とか」
やべ、俺も恥ずかしくて死にそうなんだけど。
顔から火が出そう、つーか噴いてる気がしてならない!
うわあ死ぬ!死ねる!
もはや何でこんなにも先輩の好きな人を聞き出したいのか分からない。
でも言ったからには言ってもらう……!
ぎゅ、と強く目をつむり深呼吸して、平常心を取り戻そうとする。
そしてできるだけ“爽やかな笑顔”を作って先輩を促す。
「先輩は、どうなんですか?」
「きょ、今日はいい天気だよなあっ!!」
「いきなり話題を変えようとしないでくださいよ」
なんて分かりやすい話題転換の失敗。
「えっ……と……その…………いや、俺………」
かなり恥ずかそうだ。
顔を真っ赤にさせて視線をあっちこっちに変え、口をパクパクさせている。
男2人で何してんだか……。
「どうしたんすか?速く言ってくださいよ」
俺だって人のこと言えたもんじゃないが、でも言う。
俺は言ったからな!
「…………イエ、ロー……が、好き……だ」
かああっ!!
言って、さらに赤くなるレッド先輩。
俺までつられて赤くなってしまう。
そりゃ、考えてみればイエロー先輩もレッド先輩を好いてるみたいだし、お似合いなんじゃないか?
「ゴールドは、クリスの!どんな所が好きなんだ?」
恥ずかしさをまぎらわさせるためなのか、さっき俺が無理に聞き出した反撃なのか、レッド先輩は恐ろしいことを聞く。
「そ、それは……!!」
なんだこの現状。
「勘弁してくださいよ、先輩!もういいでしょう!?」
探りあいはバトルだけで十分だっ!
「ホホホ、やっぱり男ってバカね」
木からぴょん、と飛び降りるブルー。
「いいこと聞いちゃった♪あのヘタレたちは自分からは言えなさそうよね……
私が本人たちに、言ってあげようかしら?」
必死の探りあいも、ブルーに見られていると分かっていたら、なかっただろう。
(探りあいの場所には気をつけて)
(世界には危険が一杯)
→あとがき