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□台風の日
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ザザザザザ、と雨が止めどなく振りビュービュー風がないている。
「もう、こんな日くらい止めておけばいいのに……」
複雑な表情で窓から外の様子を伺うブルーだったが、やがて意を決したように。
「よしっ!どうせなら、私も行こう!」
台風の日
横殴りの雨が体に当たって痛い。
こんな日に“そらをとぶ”なんて自殺行為ができるはずもなく、歩くしかない。
トキワシティまであと、どのくらいだろう……?
「ふう、……大丈夫?メタちゃん」
“へんしん”で雨から守ってくれているメタちゃんに軽く声をかける。
別にいいのに、メタちゃんは自分から志願したのだ。
なんていい子。
「それにしても……すごい雨ね……」
ゴロゴロゴロ、と唸るかのような雷音が響く。
ビューッ!と不意に強風が来た。
「きゃあ!?」
はためき、もはや無意味でしかないレインコートのフードをつかみ、耐える。
「あ、トキワシティだ……!」
看板がやっと見えた。
風も今はちょっとマシだ、一気に行っちゃえ!
ダダダ、と走ってジムに駆け込む。
「戻って、メタちゃん!」
メタちゃんもびちょびちょだ。
道中、野生のポケモンとバトルをしたせいで、少し傷ついてしまっている。
「ごめんね……」
メタちゃんは『気にしないで』と言わんばかりに首(?)を振った。
◇◆◇◆◇
「こんばんは!寂しいかと思って来てあげたわよ、感謝しなさい!」
我ながら変なテンションになってしまった。
これは夜中のテンションだから仕方がないと思いたい。
うわあ、さすがのグリーンもこっちを見て停止している……。
ていうか、ガン見だ!?
なんか恥ずかしいんですけど!?
「えーと、グリーン?」
「こんな雨の中、一人で来たのか?」
よかった、発言についてはとりあえずスルーなのね。
隠すこともないから平然と言う。
「そうよ、一人歩いてここまで来たの」
あはは、と笑いながらおどけた感じで言ったのに深刻そうなグリーン。
いつものことなんだけどね。
「あっ、メタちゃんが守ってくれたわ」
「……歩いてって……危ないだろ」
「え」
グリーンが純粋に心配してくれてる!?
やばい、めちゃくちゃ嬉しい。
「でも、台風来てるし……グリーンは一人だろうし、会いたいなって」
こんな日くらいはわざわざジムに行かなきゃいいのに。
変に責任感が重いから、頑ななんだよなあ。
それでこそ“グリーン”なんだけど。
「……もうこんなこと、するなよ」
「ええ。グリーンに迎えに来てもらうわ」
私が笑って言うと、グリーンも笑った。
「相変わらず口の減らない女だ」
「何よ、私が来て嬉しいくせに」
「……黙れ」
反論に少し間があったことが嬉しくて仕方ない。
意地っ張りなんだから、もう。
「ねえ、手伝おうか?」
「いい。それより、シャワーでも浴びてきたらどうだ?」
「へ?」
あきれたようにグリーンはため息をついてきた。
慌てて自分の状況下を確認すると。
びちょびちょで張り付いたレインコート。
スカートと髪からは水が滴っている。
ジムの入り口からは靴によってできた水滴の道(?)が伺えるし……。
「風邪引くぞ?」
「……そうね。シャワーでも浴びてくるわ」
「来てくれてありがとな」
「ん?グリーン、何か言った?」
「いや、何でもない」
背後から聞こえた声は、確かに感謝だったはず。
(貴方に会いたくて)
(無理なんてしないでね?)
→あとがき