pkmn

□風邪
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「………くしゅっ」


ベッドに横たわり、天井を見つめるシルバー。


何もしない(できない)現状が非生産的に感じられる。


「暇だ………」













風邪













唐突にガチャリ、とドアが開けられる音がする。


姉さんだろうか。

「元気?大丈夫?」



「なっ……!クリス!?」


意外なことに部屋に入って来たのは、クリスだった。

大慌てでベッドから飛び起きた。


何故俺の家の鍵を持っている……。



「あ、マニューラが氷枕作ったの?すごい!」


褒められたマニューラは嬉しそうだ。



「シルバー、何か食べられそう?っていうか朝から、何か食べた?」



「何も食べてない……」


力なく言い返すと、もう、とあきれられた。


「温かいうどん、つくってあげる。ちょっと待ってて」



うどん……まあ病人食の代表だよな。


悪い、と一言声をかけてベッドにたおれこむ。


「気にしないで。私たち、仲間でしょう?」


トントン、と何か具材を切りながら答えるクリス。



そういえば前にもそんなことを言われたな。



クリスのうどんが完成する頃合いを見計らったかのようなタイミングでドアが

またガチャリ、と動く。




「うおっ、うどんかー」


「ゴールド!?あなたの分は無いわよ?」


「はあっ!?クリス……お前は鬼か?」



ゴールドの登場をクリスが予知できるはずないだろう。


俺の家で何故こんなやりとりがなされているんだ……。




「うまそー……」


「見るな、食べづらい」



おぼんにのせられた小ぶりの鍋からうどんを食べる。


横取りされそうなほど見つめられて不快だ。


病人は俺で、ここは俺の家で、うどんは俺のための物のはずだ。



俺に平穏な休息は無いのか。



「ところでシルバー、なんでこんな季節に風邪なんか引いてんだ?」


「ゴールド、風邪を引くいきさつに、そんな明確な理由はないから」



分かってらあそんなこと、と言ってふてくされるゴールド。


なんて子供っぽい奴だ。




「……ゴールド、何しに来たのよ」


「は?そりゃ、シルバーが風邪引いたっつーから、お見舞いに来たに決まってんだろ?」


その態度はお見舞いに来た態度じゃないけどな。




険悪なムードになりつつあるとき、ナイスなのか分からないが本日3回目の

ドアノブが動かされる音が響く。





「あっ、2人とも速いわね。

 やっほーシルバー、調子はどう?」


「姉さん……」


ただの風邪でなんでこんなに見舞われてるんだ?



「はい、差し入れの、きのみー!モモンのみだけだけどね」


きのみの入ったバスケットが机の上に置かれる。



「わざわざいいのに……」



「少しは姉さんらしくしたいじゃない、気にしないでよ。

 それに今、シルバーは病人だし」


だから、ただの風邪なんだが。
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