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□I love you.の訳し方
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「………、はあ」

何度目か分からないため息をこっそりついて、バレないように
窓から顔を出して顔色をうかがうと、あの人は丁度笑っていた。

(今日も格好いいなあ、レッドさん)

彼が笑うことはボクだって大歓迎だ。

むしろずっと、笑顔でいてほしいと思う。

でも、相手は絶対にボクじゃないから。

(もう一度でもいいから、ボクに対して笑ってくれないかな……)


「高望みだなあ、ボク……」

窓から出していた顔を室内に戻し、
机に突っ伏してはあ、とまたため息を溢してしまう。


「イエロー、どうかしたの?」

「ふわっ!?……ブルーさん!
 どうもしてませんよ?」

突然話しかけられて驚く。

彼女は一つ上の学年で、レッドさんと仲がいいから。

レッドさんとの切れそうな接点となってくださる、素敵な方だ。

ボクなんかに何のようだろう。

(ブルーさんと仲良くなれるまでの経緯は散々で思い出したくもないが、
彼に名前を覚えてもらえただけでもボクにとっては大きな進歩だから)


「あ、さてはまた、レッドを見てたわね?」

「! そ、そういうんじゃないですよ」

窓際のボクの席からは、登校してきたレッドさんとグリーンさんが
見事にうかがえるので、ブルーさんにバレてしまった。

(それくらいは許してもらえても、いいじゃないですか)

あからさまな嘘をついて目を反らすと、フフフとブルーさんは笑った。


「相変わらず分かりやすい子ね〜♪
 あ、そうだイエロー、今日のお昼ご飯、一緒にどうかしら?」

「いいんですか?ボクなんかとご飯を一緒に食べるなんて」

あらイヤ?と困ったように聞かれて、ぶんぶん首を振る。

(嫌なはずないじゃないですか!)


「なんならレッドと二人っきりで食べる?」

「〜っ!そ、それはっ!!」

言われて想像して、なんて幸せだろうと思った反面、やっぱり恥ずかしい。

(何話していいか、絶対に分からなくなるし!)


「ホホホ、イエローには荷が重いかしら。
 まあいいわ、じゃあお昼にね」

バイバイ、と言って去っていく先輩。
なんて自由人。


「ふたりっきり……」

遠くからレッドさんを見ることができるだけで幸せな気分になる。

近くで見て微笑まれたときは、死んでも構わないとすら思った。

名前を初めて呼ばれたときは、嬉しすぎて脳がすぐには理解してくれなかった。


「お昼ご飯、楽しみだな……」

まだ授業前だというのに、くぅとお腹が鳴ったような気がした。


◇◆◇◆◇



「あらそれ、どうしたの?」

昼になったとたんに迎えに来てくれたブルーさんと並んで歩く。

ボクの持つ巾着袋(お弁当が入っている)とは別のビニール袋に、
ブルーさんは興味をしめしたようだった。

「これですか?ボク今日、3限目が家庭科の調理実習で
 マフィンを作ったんですけど、休みの子の分を分けたら
 食べきれなくて……よかったらみんなで、食べませんか?」

「やった、ありがとねイエロー」

ブルーさんは小さくガッツポーズをして、可愛過ぎる笑顔で笑う。


「あ、みなさんアレルギーとか嫌いなものとかありますか?」

だったら渡せないや、と思ったもののそんな心配は杞憂だったようで、
ブルーさんは大丈夫よ、と返してくれた。


「そんな可愛い物なんか渡されたら、
 レッドも真っ赤になるんじゃないかしら」

言ってから『あ、図らずとも赤とレッドがかかった』と
呟き照れ笑いするブルーさんだけど。

(れれ、レッドさんが真っ赤!?)

なってくれたら嬉しいような、夢のまた夢の想像で終わるような。

真っ赤になったボクに、ブルーさんはしょうがない子ね、
と言って頭を撫でてくれた。

◇◆◇◆◇


「こ、こんにちは……」

よう、と人懐っこく笑って出迎えてくれるレッドさんと
無表情のグリーンさんが、屋上で待ってくれていた。


「レッド、頼んでおいたお昼、買ってきてくれた?」

「もちろん。……つーか俺をパシリにすんのやめろよ……」

言いながらもコンビニのビニール袋を渡すレッドさん。

ありがと、とブルーさんが言ってそして。

(ボク……何を話そう……)

これはチャンスだ、いくらボクが鈍い鈍いと言われていても、それくらいは分かる。

チャンスなのに……どうしようか、何を話せばいいのか分からない。

目の前が真っ白になってしまったイエローに、ブルーが慌てて助け船を出す。


「そ、そうだ!イエローがマフィンを持ってきてくれたのよ!」

「おー、うまそう!ありがとな!」

「あ……は、はい……」

爽やかな笑顔と共に言われ、クラッときてしまうイエロー。

この天然タラシめ、とブルーが言うがグリーンにしか聞こえない。


「そーいやブルーは、お菓子とか持ってきたことないよな」

「バレンタインも市販だったな」

何気なく続けるレッドさんだけど、それって聞いちゃダメだと思う。

グリーンさんが初めて発した言葉もグサっとくる。


「五月蝿いわね、もう。私がお菓子を渡す相手はシルバーだけなんだからね!」

誰があんたたちなんかに、と言いながらも
冷や汗をかいているブルーさん。

考えたこともなかった、と小さいブルーさんの言葉は
ボク以外に聞こえなかったらしい。

レッドさんは『けちー』と言い、グリーンさんはぷい、と顔を背けた。


「バレンタインかー、俺もチョコもらいてー!」

「れ、レッドさんはいつもチョコ、たくさんもらってるじゃないですか……!」

くそう、とか言いながらも楽しそうに言うものだから、つい言ってしまった。

(グリーンさんの方がモテていて、レッドさんよりも今年は28個多かった、
とレッドさんが悔しそうに言っていたのは最近の話)


「俺へのチョコ?……ナナミさんからと、ブルーからのと、
 あとは……あ、クリスからもらったくらいだな」

「全部が義理だしな」

「言われずとも知ってるっつーの!」

レッドさんは意外とチョコもらってないんだ……。

恥ずかしくて渡せずじまいだったチョコを思い出して、少し胸が痛い。

自分で作ったチョコを食べて、泣きそうになったのは鮮明に思い出せる。


「……じゃあさ、イエロー」

「? 何ですか」

いいこと思い付いた!と言わんばかりのレッドさんの楽しげな表情。

ぐいっ、と一気に間を詰めてきたので頬に血が集まるのが分かる。


「イエロー、来年はさ」

耳元で囁かれる言葉の一つ一つに、ビクンと体が反応してしまいそうだ。

近くにいるのが嬉しくて、恥ずかしくて幸せで。

(ブルーさん、お昼ご飯誘ってくれてありがとう!)
今更ながら感謝感激。


「俺にチョコくんない?」

「は……はい……」

来年のバレンタインはレッドさんにチョコを渡す。

頭の中で反復させると、素晴らしい笑顔のレッドさんは更に続けた。


「グリーンやゴールドには渡さなくていいから」

「えっ」

堂々とチョコを渡せるだろうか。

来年のことを考えて、速くもドキドキしてしまう。


(俺だけに渡してくれれば、それでいいから)


囁かれた言葉は、期待してもいいんですか?



I love you.
(ずっと目で追っています)














誰が何と言おうがこれはレイエ。
グリブルは今回メインじゃないよ!
レッドさんは自分で色々言っておいて後で
「うわあああ俺、恥ずか死ぬううううっ!!!」
って叫んでいてくれれば充分です←ひどい
きっとトイレの個室とかで叫んで、バカかお前は、とグリーンに突っ込まれる←
攻めに出ようとしてもヘタレているよ、うん。
それゆえに訳がああなる。
恥ずかしくて言えないから見てます、みたいな。
甘々っぽくなってろー(願望)






*おまけ


「ラブラブねー」

何やらイエローに耳打ちするレッドに対し、
冷ややかな視線を浴びせながら呟くブルー。


「お前も、来年は作れよ」

「あら?グリーンったらシルバーに妬いたの?」

シルバー限定というわけではなく、レッドとイエローを見て
急にそんなことを言ったのかもしれないが。


「……バカか」

「バカって言う方がバカなのよ」

呆れたように言われたのが癪で言い返すと、小学生か、と言われた。

まあ確かに、我ながらなんて子供っぽい怒り方。


「作れよ、チョコ」

「はいはい」

適当に受け流すように答えると、ちゃんと分かってんのか?と
疑うような目で見られた。

(なんだかんだ言って、私からのチョコを期待してくれてる、ってこと?)


「レッド達とは別でな」

「やっぱり妬いてるんじゃない」

「……ほっとけ」

素直じゃない彼の顔が赤い気がしたけど、どうなんだろうか。

(いつものポーカーフェイスはどうしたのよ)


「グリーンってつくづく思うけど、私が大好きよね」

「黙っとけ」






強制終了!
グリブルはこれとは別に単体でちゃんとあります……。
つーか何だ、グリーンさんがただの恥ずかしがり屋さん。


→次はグリブル
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