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□元拍手文
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想いあい(イエロー&クリス)
イエレ、ゴークリ前提

※「探り合い」のクリス&イエローver


『……って、言ってたわよ?』

「そ、それっ……!?」

ポケギアからはブルー先輩の楽しげな笑い声が聞こえてくる。

人伝(ひとづて)に告白(?)されるなんて、思ってもみなかったんだけど。


『イエローもいるんでしょ?代わって』

「……はい、分かりました」

先輩に言われて、イエロー先輩に代わる。

ブルー先輩に
「ポケギアで話したいことがあるんだけどいい?
 あ、イエローも呼んでくれると助かるんだけど……」
と言われたのが数日前。

何か緊急の用かしら、と了承したのが間違いだったのかもしれない。

まさか、ゴールドが私のことをそう想ってくれてたなんて……。

イエロー先輩の顔がみるみる赤くなっていく。

自分もあんな感じの反応だったのだろうか、と思うと恥ずかしい。

◇◆◇◆◇


「く……クリスさんは、何て言われたんですか?」

ブルー先輩からの通話が途切れ気まずい空気が流れだすと、イエロー先輩は言葉を紡いだ。

どっきーん、と我ながら意識しすぎだけど、心臓が跳ねた。


「……ゴールドが、わ、私をす……好き……って……」

隠すほどやましいことじゃないから言うけど、
無意識に言葉が途切れ途切れになる。

私、ゴールドのことを意識しすぎだ……恥ずかしい。


「ボクも、似たような感じでした。
 レッドさんが、好き……って」

照れながらも嬉しそうに言うイエロー先輩。

ほんのりと頬を赤らめているのが伺える。


「そっか、ゴールドさんが……
 クリスさんは、ゴールドさんのこと、好きなんですよね」

「ふえぇっ!?」

何で知ってるんですか!?

なんて、言えない(言わない)けど。

ははは、と軽く私の驚きを笑い飛ばすイエロー先輩。


「クリスさんはゴールドさんの、どこが好きなんですか?」


「い、イエロー先輩は!レッド先輩の、どこが好きなんですかっ?」

その場逃れの質問だけど、私にはこう言う以外に打開策を見出だせない。


「え、ボク?」

特に驚いたようもなくはにかむイエロー先輩。


「レッドさんは、優しくて格好よくて……全部、好きです」

なんて素敵な答えだろう。

イエロー先輩はレッド先輩のことが、大好きなんだなあ。

ブルー先輩が伝える必要性なんて、なかったんじゃないかしら。


「レッド先輩は、格好いいですよね」

「はい!」

心から嬉しそうに、楽しげに答えるイエロー先輩。

「ゴールドは、そういうのとは全然、違って……」

「そうですか?」

促すイエロー先輩の言葉が心なしか優しい。


「何だか変かもしれないんですけど、守って……あげたい、
 教えてあげたい、っていうか……」

私が言葉に迷っていると、ふわり、と微笑む先輩。


「クリスさんらしいですね」

そうなのかな?

「でも、そういうの……私の一方的な勝手な考えで、
 ゴールドからは鬱陶しいだの、真面目すぎるだの言われちゃってて」

だから不意打ちのブルーさんからの優しい(?)
告げ口がほんの少し、嬉しい。

先輩にしてみればただのイタズラかもしれないけれど。


「ゴールドさんは思ってることをなかなか言わなさそうですもんね」

苦笑するイエロー先輩の意見が一致した。


「そうなんです!……もう、馬鹿正直すぎる時もあるのに。
 どうしてなのかしら……」

「ゴールドさんらしいですよね」

らしい、か……確かに“らしい”っていえば“らしい”かも。


「今度、ゴールドに問い詰めてみます」

「何をですか?」

分からない、と代弁するかのように首をかしげるイエロー先輩。

この先輩の動きは、なんでこうも一々可愛らしいんだろう。

私もこんな、可愛い仕草を自然にできたらいいな、と何となく思った。


「私のどこが、好きなのかを」

「積極的ですね……!」

どうせなら本人の口から聞きたいですし、と付け足すとそうですね、と
朗らかに返された。


「イエロー先輩はレッド先輩に、『好き』って言われたこと、ありますか?」

「すっ……!?」

赤面してオロオロと慌てる先輩。

不意打ちしてしまったかしら。


「えと……そうですね、軽くなら、されたのかも」

かも?

なんで疑問文系なんですか!


「だっ、その……寝起きだったり、意識が曖昧な時に
 い、言われた気がしたんですけど……
 聞き返してもいつも、はぐらかされてしまうんです」

愛されてますね、先輩。

私なんか一度も言われたことなんてないし、
そもそも今回のこの一件が無ければ
片思いなんだと、ずっと想い続けていただろうし。

いわゆる『恋愛対象』として見てくれていたことだけでも信じ固い。

……これで全部、ただのブルー先輩のイタズラ(創作&事実の捏造)
だったら、私は泣くぞ。

2、3回は軽く死ねるね。


「告白、しようとは思わないんですか?」

「思ったことがないわけではないです。でも」

ゆっくりと穏やかに話し出す先輩。


「レッドさんはみんなが大好きで、みんなもレッドさんが大好きで……
 ボクだけを見て、なんて。ボクだけを好きになって、だなんて。
 告白してしまったら、そうやって思ってしまいそうで、怖いんです」

怖いんです、と笑顔ではない笑顔を浮かべて続ける。


「ボクはわがままで、自分自身に歯止めをきかせられるかわからない。
 レッドさんを独占したくなるのは、エゴですから」

独占、か。
あるいは嫉妬?


「好きなら、好きな人に対してそういうことを思ってしまうのは、
 仕方がないものじゃ、ないですか?」

私を見て!
私だけを見て!

他に嫉妬してしまうのは愛がゆえ。

それこそ『恋愛』なんじゃないかな、分かんないけど。

私はそう思う。


「ううん、何て言ったらいいかな……
 あ、クリスさんだって告白、してないんですよね?」

「はい……フラれて軽蔑されそうで」

「軽蔑って、ゴールドさんそんなことしますかね」

イエロー先輩がさりげなく話題を変えた。

しかも私のことだなんて、一体どうして。

恥ずかしすぎる。


「しますよ、絶対!
 ゴールドのことだから冷ややかな目で
 『へー、クリスってそう思ってたのかよ。俺は“仲間”だと思ってたのによ』
 って言うに決まってる……シルバーにも告げ口して、
 私の居場所が無くなる……」

「被害妄想ですよ、クリスさん」

先輩は愛されてるからそんなことが言えるんです!

ゴールドの変わり身(?)の速さは驚くほど。

先の先まで考えておいても、あっさりとくつがえしてしまう。

だから、甘い考えは捨てなきゃならないんです。


「ゴールドさん、見るからにクリスさん好きですよね……
 なのに、軽蔑なんて」

するわけないですよ、と続ける先輩だけど、今……何て?

「ゴールドが?見るからに?」

信じられない思いでイエロー先輩を見る。

私から見ればイエロー先輩がレッド先輩に愛されているのが一目瞭然のように、
他人から見た方が分かりやすいものなのかな……?


「ゴールドさん、カントーに来るたびにお土産買ってますし」

「え?もらったことない……」

「そうなんですか。渡せてないのかな、やっぱり」

やっぱり、という妙に確信的な言い方に疑問を覚える。


「お菓子に限らず、いつも名前入りのマグカップとか、お揃いのマフラーとか、
 二つで一組のストラップとか、イニシャル入りのハンカチとか、
 ポケモンの大きなぬいぐるみとか、買ってますよ」

「ええっ!?」

名前入りの……そりゃ誰に送るかモロバレだ。

ポケモンのぬいぐるみって、何でまた。


「イニシャル……シルバーじゃ、なくて?」

「クリスさん、いくら私でも“C”と“S”は間違えませんよ」

それもそうか。

にしてもゴールド、聞いていてこっちが恥ずかしくなる買い物だ。

カントー関係ないしね。


「そっか……プレゼント、してないんですか……もったいない」

先輩の『もったいない』発言はとりあえずスルーして。


「あ、そういえば」

一度だけ、ゴールドではなくシルバーからプレゼントをもらったことがある。

『どうせなら、3人で着けないか』と言って手渡してくれたマフラー。

シルバーの分だけ何故かメーカーが違ったのよね……。


「シルバーさん、いい人すぎます……」

イエロー先輩が感動している。

大方、ゴールドが買って、渡せないのを見かねたシルバーが協力してくれたのだろう。

シルバー……今度何かお礼をしなければ。


「ゴールドが直接渡せばいいのに」

買えるのに渡せない根性が謎。


「恋人どうしになったら、渡すつもりなのかもしれませんよ?」

「……そんなものですかね」

男の子ってよく分かんない。


「こんな話の後ですが、クリスさんは告白はするより、
 されたいタイプですか?」

「ええっ、そうですね、できたら……されたいです」

意外そうな反応をするイエロー先輩。


「積極的なことを言ってましたが」

「なかなか言わないゴールドが悪いんです。ブルー先輩の言葉を信じ、
 明日にでも玉砕覚悟で言うつもりですけどね」

「かっこいいです……!」

イエロー先輩の言ってることはよく分からないが、気にしない。


「イエロー先輩はされたいですか?」

うーん、と考えるそぶりをするイエロー先輩。

いつのまにか普通に話してしまっているけど、やっぱり恥ずかしいなあ。

話題のターニングポイントがいまいち分からない。


「やっぱりされたいです、さっきも言いましたけど
 独占したくなっちゃいそうなんで」

へへへ、と照れ笑いをする先輩。

男装(?)していた人とは思えない乙女っぷりです。

無意味にそんなことを思う。


「ボクの方が一歩退いた関係が続いてほしいんです……
 ボクはあの人の背中を、追い続けたいから」

独特の価値観だな、私はゴールドの隣にいたい。

前に前に、先走らないでほしい。

ずっとそばにいてくれたらいいのに……。


「クリスさん、クリスさんは今、幸せですか?」

唐突に聞かれて戸惑う質問だ。

でも、答えは決まってる。


「もちろん。今のままでも十分、幸せです」

「ボクもです」

先輩と笑いあって、恋バナも案外いいものなのかもしれない、と思った。




想いあい

(彼は彼女を想い、)

(彼女は彼を想い、)


(想いが通ずるのはいつの日か)






今回は何故か長くなった……!
友人からのリクでした。
キャラ崩壊してない、と思ってもらえたら幸いです。




長すぎたので早々に拍手から移動。
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