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□呟き日和
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「君たち図鑑所有者を集めたのは他でもない。」

ぐるり、とオーキド博士は図鑑所有者を見渡した。

マサラタウン、研究所にて。

唐突に集められた為、収集の理由を誰も知らない。

(ブルー、お前何かしたんじゃないか?)

(何で私!? レッドこそ怪しいんじゃないの?)

(……落ち着け、だとしたら他の地方からも所有者を集める必要はないだろう)

がるるる、と唸りながら小声でケンカし始めるレッドとブルーを、
同じく小声ながらも静かに止めるグリーン。

(すごいです、グリーンさん! ……だとしたら、図鑑のレベルアップですかね?)

イエローが恐らく本音であろうことを小声で呟く。

さああっ、と一気に青ざめるレッド。

(悪い、俺、そんなつもりじゃ……)

(? どうかしましたか?)

イエロー本人が言ったことから、「イエローの図鑑はレッドのお下がり(しかも旧式)」だったことを
思いだし、とりあえず謝るレッド。


「そこ、コソコソ話すな」

めっ、と子供を叱るかのように戒めるオーキド博士。

子供じゃないのに、ととっさに彼らは思ったという。


「呼んだのは他でもない、ポケモン図鑑のレベルアップじゃ」

「また新しい地方のデータを追加するんですか?」

確かイッシュ地方の、と思い出すかのようにクリスが言う。


「イッシュかー、俺、行ったことねーよ。シルバーは?」

「お前はまた……」

空気を読め、と目を鋭くさせ言うシルバーだったが。


「シルバー、そんなことゴールドに期待しちゃダメよ」

「なっ、クリス!? てめー、何てことを……」

「ああ悪い、そうだったな」

「シルバーまでっ!?」

涙目で狼狽えるゴールドをものともせずに会話を進めるクリスとシルバー。


「これ、そこも静かにせんか」

「すみません……」

クセなのか、しょぼくれた声でクリスだけが返事をした。


「シルバー先輩とゴールド先輩は返事しないとね」

「サファイア、そこは言わなくても良いところだから」

ルビーに突っ込まれても、うんうん、と何やら神妙な顔つきで続けるサファイア。


「これ、この間教えてもらったと!」

えへん、と胸を張るサファイアにエメラルドはげんなり、と聞き返す。


「何?」

「つんでれ、ったい!」

しーん、と静寂が一瞬場を飲み込んだかのように思えた。

グラードンとカイオーガ、レックウザの三つ巴より世界の終わりに近かった。

反転世界に呑み込まれるところだった。

否、過去にとらわれて神々から制裁を受けるところだった。


「違うから、絶対違うよサファイア!」

「んなわけないだろ、バカー!!」

えっ違うの? とでも言いたげにきょとん、とした目で場を見つめるサファイア。


「ツンデレ……」

伏せ目がち、というか床に視線を落としたまま呟くシルバー。


「ちょっとサファイア、シルバーが何か落ち込んじゃったじゃない!」

「「「何で!?」」」

ブルーの声に3人ははもった。流石、制覇トリオ。(言ったらラルドに殴られそうだから言わない)


「シルバー、貴方はツンデレじゃない、そう……えっと……」

「クリス、続かないなら止めてやれよ!」

ゴールドにすら憐れみの目を向けられるシルバー。


「そ、そう! シルバーは優しいし!」

「方向性を根本から変えたー!?」

驚愕の表情を浮かべるゴールドに「さすがに五月蝿い」とクリスがなだめる。


「楽しそうだよね〜」

「やめろ、頼むから混ざらないでくれダイヤ! いや、ダイヤモンド!」

必死のパールにくすり、と笑うプラチナ。


「楽しいですね」

「そ〜だね〜」

「だなっ!」

微笑ましい雰囲気に、思わず回りの喧騒を忘れそうになる。


「シルバー、落ち込まないで! 貴方はクーデレなのよ、うん!」

「デレ……」

「クリス、“デレ”が嫌らしいぞ!」

「ちょっと、シルバーを泣かせたら姉さんがただじゃおかないわよ?」

「ブルー怖っ!」

「レッドさん、煽っちゃダメだと思いますよ……?」

「afraid……!」

「ルビー、失礼なような気がするったい」

「サファイア、ルビーは“失礼なような気がする”んじゃなくて、失礼だよ」

わーわー、騒がしい声が研究所に木霊して、飽和して……。


「鎮まれいっ!」

祈祷師のようなオーキド博士の糾弾。

やっと静かになった。
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