pkmn

□恋する彼に恋してる
2ページ/3ページ




「もうこんな時間……」

部活動はとっくの昔に終了したのにも関わらず、練習を続ける彼を見ながら呟いた。


「っ、う」

パシン、と空を裂く音を奏でながらボールはゴールネットへと吸い込まれていく。


「うわあっ……」

サッカー部の彼、ゴールドくんは運動神経が優れている。

きっと誰よりも。

そう思わせるほどの実力を保持し、実際に何度も様々なスポーツで賞歴を重ねている。

そんな彼だけど勉強はめっぽう苦手らしい。

おまけにフランクな人柄が知れわたっていて、憧れられるような実績をあげながらも
あまり羨まれていない、ある意味可哀想なスゴイ人なのだ。

だけど、私は。

そんな彼が大好きで。


「あだあっ!?う、ぐ……」

つるん、と何もない場で滑るかのごとく転ぶ彼。


「!!」

それでも、体制がめちゃめちゃでもシュートを決める。

へへっ、と誰が見るわけでもないのに(私は隠れて見てるけど)
照れ笑いで誤魔化そうとする姿は最高に可愛い。

泥まみれになってもなお練習を続ける彼。

どれだけ『運動神経が優れている』といったって、生かせなければ意味はない。

彼だって彼なりに練習している。

努力する彼は格好いい。

それでいて普段は、練習をしていないようにおどけてみせる。


「おしっ!」

納得のいくシュートが決められたのか、ガッツポーズで満足気な彼。

残念なことに私にはどのシュートも同じくらい精度が高く素晴らしいものだったとしか思えない。


「あ、ゴールド!」

こんな所にいたのね、なんて言いながらグラウンドにやってくるマネージャー。


「ははっ、クリス、今のシュート良くないか?」

「練習時間はとっくに終わってるのよ?はやく帰ろう」

そうだな、なんて笑いあいながらボールを持って部室に向かう彼ら。

マネージャーのクリスタルさんは、彼と付き合っている。

そんなことは周知の事実で。

私だって知っている。

あの彼の笑顔はクリスタルさんに向けられたもので、私のものじゃないことくらい。

私にだってそれくらいは分かってる。

でも……でも、私は。

見ているのが耐えられないはずなのに見続けてしまう。

思わずフェンスをぎゅっと掴んだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ