pkmn

□あなただから
1ページ/5ページ



今日は3月3日。

僕はさっきから何度も何度も、時計を確認してしまう……時刻は15時45分を過ぎた頃。

時間までもう少し。

だからちょっとだけ、いきさつを思い出すことにする。




絶対その場で適当に思い付いただけなんだろうけど。

あれは僕の誕生日の、ちょうど1ヶ月前のこと。

レッドさんの家まで行ったら、何故かブルーさんもいて、三人で駄弁ったんだ。


「イエローの誕生日会、どうしようかなー」

「本人がいる前で言うべきことじゃないわよ」

はー、と大きな息を吐きながらも、レッドらしいっちゃらしいわよね、と
僕に優しい笑みを向けてくれるブルーさん。

確かにレッドさんらしいな、と思う。

けど内緒にしておいてもらいたかったような気もする……僕って高望みしすぎだなあ。

はは、と自分の愚かさに笑えば、そうだ!とレッドさんはいきなり声をあげ、立ち上がった。


「何か、思い付いたんですか?」

「ああ!プラチナに頼んで、世界一豪華な誕生日会をするってどうだ!?」

どうだ、じゃないわよ!

ぱちこーん、と気持ちのいい音がして、ブルーさんにレッドさんは叩かれた。

ブルーさん、いっそ清々しいです。


「後輩任せとか、先輩としてどうなのよ!ダメよそんなの!」

「えー、何でだよ」

「何でも何も無いわよ!自分で考えなさい!バカっ!」

ふてくされるレッドさんに、あきれながら怒るブルーさん。

二人のやり取りは本当に面白いと思う。

いわく、“悪友”なのだそうだ。

でも、あのレッドさんに“バカ”だなんて言えるのは、グリーンさんとブルーさんくらいだろう。

僕なんて、口が裂けても言えやしない(言う気もないけど)!


「じゃあ俺らだけで祝うとか、どうだ?地元会、地元会ー!」

「それじゃあ、いつもと変わらないじゃない」

「場所を思いきった所にしたら、いつも通りとは言えなくなるんじゃないか?」

「例えば、どこよ?」

楽しそうに打ち合わせをする様は、まるでイタズラの作戦会議。

ブルーさんも、僕がいること、忘れてませんか?

僕ってそんなに存在感無いかな……軽く自己嫌悪に浸りかけた時、ブルーさんが
ぱんぱん、と空で手を叩いた。


「ひとまず中断!レッド、続きはまた今度ね!さ、イエローとどこにでも行きなさい」

「おうっ!」

「ええっ!?」

話の行く末が見えないんですけど!

結局その日は、予定していたこと(ハナダに出来たケーキ屋さんでお茶)を
終えてすぐに別れてしまい、うやむやになってしまった。

うーん、僕の誕生日、一体どうなるのだろう……。

不安さえ覚えたけれど、楽しみじゃないことなんて、あるはずがなかった。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ