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□とある理系女子たちの会話
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「あ、そうだ、ポテチとか食べない?」

不自然にならない程度に話題を反らせる。

私の格好は、さながらコンビニ帰り。

ビニール袋から取り出して、ペリッと開ける。

袋を差し出すと、それじゃあいただきます、とクリスは手をつっこんだ。


「あ、手とか洗った?」

「洗いましたよ、さっきコーヒー用意してから来たんで。
 今さらですけど、コーヒーでいいですか?……砂糖とミルクどうします?」

「んー、ブラックでいいわ」

ブラックですか、なんて驚きつつも分かりました、とうなずいて
スリッパをパタパタ響かせながら白衣をひるがえすクリス。

気が利く、よくできた後輩だなあと改めて思う。

しっかりしてるなあ……私もしっかり、しなきゃね。

はあ、と息をついて、そういえば手を洗ってない、と思い直して伸ばした手を引っ込めた。

備え付けてあった洗面台で手を洗ってから戻る。

すでにクリスも戻って来ていた。

すばやい後輩だ。

グリーンはまだみたい。長いなあ。


「先輩、お茶うけにポテチだけってどうかと思ったんで、これとかどうですか?」

「わ、チョコ?」

一口大の1つ1つがビニールの包装紙に包まれたチョコ。

確かにポテチだけじゃあ苦しいよなあ、とありがたく頂戴する。


「最近どうなの?クリスは」

「忙しいですけど、割と安定してきましたよ。エメラルドくんも時々手伝いに来てくれますし」

今日はポケモン達と遊ぶんだ、ってホウエンに行っちゃいましたけどね。

完全に保護者の目線からのクリスの言葉に、そうじゃなくて、と水を差すのは少しはばかられた。

……まあ、それでも言っちゃうのが私なんだけど。


「そっちの近況じゃなくて、ゴールドとは。うまく、いってるの?」

「……ゴールドですか」

とたんに口をつぐんで、カップに視線を向けるクリス。

触れちゃいけなかったかしら、少しだけ罪悪感を覚える。

でも気になるじゃない?そういうのって。


「ここ数ヵ月―――会って、ないです」

「…………マジ?」

「残念ながらマジです」

クリスは涙目で大きな息をついた。


「忙しいから会うたびにイラついてたのは私なんですけどね!
 こう音沙汰がないと……でもギアを掛けるのも、怖くて」

「溜め込んでるわね、相当」

「……ノーコメント、です」

ぐずぐず、とよくできた後輩は、年相応に歪んだ顔を必死で隠そうとする。

そんな必死だと見るのも失礼だし、行き場を無くしてポテチにまた、手を伸ばした。

そういえばカロリー、どのくらいかしら。

包装紙を手にとって見る。

わ、ヤバッ……夏までには体型を何とかしなきゃなのに。


「先輩は、」

擦ったせいか赤くなった目を隠すのを諦めたのだろうか。

クリスは真正面から私を見据えた。


「先輩ならこんなとき、どうしますか?」




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