pkmn

□遠くから見守ります
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白い花を、エリカが急に携えてやってきたのは、春の盛りを少し過ぎた4月下旬のことだった。


「何よエリカ、急に花なんて」

「せっかく美女揃いのジムなんですから、花でも生けたらどうかと思いまして」

確かに桜も散って、どことなく寂しい感じがある。

我がハナダジムも、女ばっかりのくせして仕事をこなすだけの、淡々とした面白味の無い雰囲気。

タマムシジムもそうだったのかしら?

メイドに花を生けてもらうよう頼むと、心なしか華やかになったような気もした。


「カスミ、聞きましたわよ」

「なにを?」

こほん、と袖で口元を隠して咳をして真面目に話し出すエリカ。

さすがは大和撫子なだけはある、場違いだけど感心してしまった。


「レッドのことです!」

「へ?」

「レッドのことですが」

「うん、2回も言わなくていいから。何かあったっけ?」

全く説明してくれそうにないエリカだけど、先を促すと何故かあきれたように笑われた。


「結局、自分の気持ちは伝えないのですか?」

「…………まあね。スイクンの役にも、立てなかったし」

「そんなことありません、カスミは、」

「いいの、エリカ。ありがとね」

励ましてくれる彼女は、嬉しいけれど。

やっとのことでふんぎりつけた後に言われると……揺らいでしまうから。

せっかく、区切りをつけたのに。


「いいのよ、もう。私は私で、いつまでもあいつに固執しすぎてたのよね」

「…………」

眉毛を思いっきり下げて、心から心配するように。

上目遣いに見上げられて、悪い気もするのだけれど、だけど
もう決めたから。

揺らがないよう、早く言葉を紡ぎ出す。


「失恋というにも及ばない片想いだったわね、あーもうバカみたい。
 エリカ、このあと時間ある?」

「へ?あ、はい……今日はもうジムも休みにしてしまいましたし」

「じゃあ私も、今日は後半日、休みにするわ!」

「ちょ、カスミ……!?」

驚いたように止めにかかるエリカだけど、
生憎私はお転婆人魚なんて呼ばれたこともあるのよ?

おしとやかなあなたに説破されはしないわ!


「甘いもの、食べたいのよ。付き合ってくれない?」

「さしずめ傷心パーティーといったところでしょうか。
 そういうことなら、私でよければお付き合いいたしますよ」

「さすがエリカ!話がわかる!」

本当は、諦めたくなんてなかったけれど。

敗北して、認めたのは私だけで。

あいつの眼中には、毛頭あの子しか入っていなかっただろうから。

仕方ないんだ、甘いものでまぎらわせよう。


「さ、今日は食べるわよー!」

切り替えを表面上だけでもすばやくして、
塞ぎ込んだ心は押し殺した。





「あなたは、この花の花言葉のように、遠くから見守ることを選ぶのですね」

エリカが自らが持ってきた花、エリゲロンに呟いた言葉は、
前を行くカスミには届くはずもなかった。



 くから見守ります

 (友達思いすぎて、想いも伝えられないの)











6000Hit感謝文、最後はカスミさんです。
カントージムリはみんな素敵ですよね!
いやジョウトやシンオウも、ってかみんな素敵ですが!
カントーとジョウトは、特に友達思いな印象があります、あれ私だけ?
エリゲロンのぶっこみかたが不自然極まりないですが、ご了承ください、
すみませんでした!

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