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夜空を飛び出して数十分、ネイぴょんは飽きたのか、ラジオから流れる音楽に合わせて体を揺らしていた。


『クリス、今日はどこまで飛ぶつもり?』

「とりあえず駅の近くに、宿屋があったわよね」

『あ、じゃあ今日は宿屋に泊まるんだね?』

「うん。そのつもり、なるべくお金を使いたくないけど……値切れたら、値切れるだけ値切るつもりよ」

笑いかけたけれど、ネイぴょんは前途多難だと言うかのように目を細めた。


『今日は階段下の物置に泊まることになるかもね』

「野宿よりマシでしょ?」

『僕は野宿でも構わないけど』

つれないことを言うネイぴょんにムッとするけれど何も言い返せなくて、行き場のなくなった視線をさ迷わせた。

辺りはすっかり暗くなっていて、故郷からも離れてしまった。

眼下にきらびやかな町並みが見える。


「海に行こうと思うの。山は毎日見てたけど、海を毎日は見たことがないし。
 ね、ネイぴょん、どう思う?」

『んー、いいんじゃない?』

「もう、他人事だと思って……」

ぷくっ、と頬を小さい子のように膨らませたけど、見てもらえなかったからすぐやめた。

もうちょっと、ちゃんと考えてくれたっていいんじゃないかしら……。

すると下から、同じようにホウキに乗った少女が空へと上がってくるところが見えた。


「こ、今晩は」

「?」

近づいて声を掛けると、私と同じようなワンピースを着た女の子は私を刹那、不思議そうに見た。


「今晩は」

「あの、私、クリスと言います。今日旅立ちました」

「私はプラチナと言います、私はもうすぐ、修行を終える所です」

人形のように小さく、微笑むかのような笑みを少しだけ浮かべ、話すプラチナさん。

素敵な人だな……ホウキには、私にネイぴょんがいるのと同じように、ちょこんと可愛らしい小リスが座っていた。

珍しい毛色だ、白色に水色、頬は黄色。


「これから頑張らなくてはならない貴女に、こんなことを言うのもひどいのかもしれませんが」

前を見て、私を見もしないけれど、私に向けて。

私に対して、丁寧に言葉を紡ぐプラチナさん。


「修行は大変です、私はご覧の通りに『空を飛ぶこと』
 それに、『水晶占い』ができるのですが」

なかなか苦労しました、と小さな苦笑と共に言われる言葉は、重い。

実際に体験した彼女が言う言は、重い。


「実はこう見えて私、今ではきちんと飛べますが、1年前は全くコントロールも利かなかったんです」

「ええ!?本当ですか?」

「はい、ですけど、修行先で出会った優しい2人に何かと……助けてもらいました」

「素敵です、憧れます」

ありがとうございます、とプラチナさんは私を見て口にした。

お礼を言うとき、きちんと人の顔を見られるのは大切なことだと思う。

先輩のように、自分も……他の誰かに、アドバイスできる日が、来るだろうか?
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