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「いいんですか!?」
私が食いつくと、おかみさんはますますめんどくさそうに口を開いた。
「お客さん、いいんですか?ただでさえ狭い部屋を」
「ボクは構いません……おかみさん、ダメですか?」
「…………まあ、あんたがいいと言うなら」
金髪の女の子は、よかったですね、と笑いかけてくれた。
だけど本当に、いいのだろうか?
料金とかどうしたらいいのかな……。
部屋に案内してもらいながら、急にわいてきた不安におののく。
『クリス、名前!名前、聞いたら?』
「あ、あのっ私、魔女のクリスといいます。部屋の件、本当にありがとうございました」
ネイぴょんに言われるがまま慌てて問うと、女の子は綺麗な金髪のポニーテールをゆるやかに揺らしながら返答した。
「ボクはイエローと言います。そんなにかしこまってもらわなくても、大丈夫ですよ?」
「そうですか?ありがとうございます」
見たところ、イエローさんは私より2、3歳下のようだ。
可愛らしい春らしいボーイッシュなコーディネートがよく似合っている。
「魔女なんて、素敵ですね!クリスさんは、どこかに行かれるんですか?」
「はい、魔女の子は12歳になったら、満月の晩に修行の旅に出るのがしきたりなんです」
「あ、クリスさん12歳なんですか。大人っぽく見えますね」
「そうですか?……あの、失礼ですけど、イエローさんはおいくつなんですか?」
ぴょんぴょん跳ねて、絨毯の上を満喫するネイぴょん。
会話の内容、聞いてるのかしら?
「ゔ……見えませんよね、そうですよね……」
悲しそうに目を伏せて言われると、何だかものすごく悪いことを聞いたような罪悪感に襲われる。
まさかだけどイエローさん。
「13歳……です」
(年上!?)
気まずそうなイエローさんに、失礼だけどびっくりしてしまう。
何て言うか、その、イエローさんって幼く見えるから。
「そ、それはともかく!」
イエローさんは話題を切り替えたいようで(そりゃそうか)、声を張る。
ネイぴょんがビクッとした、さては話、聞いてなかったわね?
「お風呂、先にどうぞ。お湯はもうたまってるはず、ですから」
「えっ、いいですよ、そこまでしてもらわなくとも!イエローさんが一番風呂は、入ってください」
「クリスさん、これから修行の旅をなさるんですよね?
大変なこともたくさんあると思います、ボクはそんなクリスさんの役にたちたいですが……
どうしようもありません。ですから、お風呂くらいはお譲りしますよ」
「そんなこと……」
宿屋に泊まれるだけで十分ありがたいのに。
いいのだろうか、こんなにしてもらっても。
「クリスさん、お風呂、お先にどうぞ?」
「っ」
『入っちゃいなよ』
イエローさんの耳には、鳥が鳴いたようにしか聞こえないだろう。
ネイぴょんが不意に、私に口をきいた。
『せっかくのご好意、断り続けるのはかえって失礼、なんでしょ?』
それはママの受け売りだ、ママの言葉はいつも調子よくて、確証ないけど……今は、その通りなのかもしれない。
素直に、そう思えた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
「はい!ゆっくりしてくださいね!」
そこまでは甘えられるはずもなく、急いでお風呂を出た。
旅は不安だけど、世の中って案外、素晴らしいものなのかもしれない。
この日だけで、そう思えた自分は、相当流されやすいかもしれないわね!