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布団に潜ると、慣れないぺちゃんこな布団だったのに、目を開けるともうすでに日が上っていた。


「あ、クリスさん。おはようございます」

「おはようございます!すみません、寝坊しちゃって」

「いえ、全然大丈夫ですよ!」

1階の食堂で朝食を一緒にいただき、何気ない話に花を咲かせる。

ネイぴょんはむき出しの柱にとまって、私があげたパンをついばんで食べている。


「イエローさんは、どこに向かわれているんですか?」

「ボクは昔の恩人を、探しに……クリスさんみたいに空を飛べたらよかったんですけど。
 ボクは飛べないですから、鳥に乗って、旅をしているんです」

「鳥に?」

コーンスープを上品に飲み干して、イエローさんは笑みをこぼした。

「よかったら、会ってみます?」



 ***



イエローさんいわく、その鳥の名は『ドドすけ』。

おじさんが飼っていたらしいが、イエローさんの方が気に入られていて、イエローさんの恩人探しの旅に着いてきちゃったんだとか。


「昨晩は無理を言って、馬小屋に泊めさせてもらったんですけど……。あ、ドドすけ!おはよう」

きゅー、と切な気に鳴く鳥に、イエローさんの発言から大きい鳥なんだとわかってはいたけれど、驚いてしまった。

どう見てもダチョウだ。

しかし、種族だか何だか関係あるのか知らないが、全体的に淡い栗色だ、小さめだし。

確かにイエローさんが乗るには、ジャストフィットしてる、かも。


「イエローさん、私って宿代、どうしたらいいでしょうか」

「おかみさんが、特別サービスで半額分だけ、払ってくれれば構わないって言ってましたよ」

「ありがとうございました、イエローさん……!」

元から安めの宿屋だけど、半額の割引なら、私もこの先そんなに質素に暮らさなくともよくなる。

死活問題だっただけに、喜びもひとしおである。


「イエローさん、本当にありがとうございました。私、そろそろ行きますね」

「そうですか……修行、頑張ってください!」

言われた温かい言葉が嬉しいけれど、ありがとう、という言葉しか浮かばない。

なんて言ったらいいの?

とりあえず精一杯に、頭を下げてその場を去った。



 ***



「ネイぴょんー?」

『クリス、もう出発するの?』

「うん、そのつもり!行こう!」

ひょこひょこ着いてくるネイぴょんが、私を下から見上げた。

忘れ物がないかどうか確認して、バッグを無意味に持ち直す。


「イエローさんに何かお礼、できないかしら?」

『クッキーでも渡したら?』

「クッキーなんて持ってきていないわよ……あ、でもスケッチブックくらいなら」

『スケッチブックなんて持ってきてたの?』

バッグをまさぐって目当ての物を取り出す、幸い曲がってないし、目立つ汚れもない。


「ママがね、修行先の風景画を描いて送って、って言ってたの。でも考えてみれば、スケッチブックじゃあ送るの大変よね」

『でも、スケッチブックなんて喜ぶかな?』

「……分かんない」

分かんないけど、これくらいしか差し上げられるようなものが無いんだもの!

我ながら差し上げられるのもためらいそうになったけど。

宿代払ったら、その後にイエローさんに手渡そう。

後回しにして、とりあえず部屋を出た。
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