pkmn
□3
2ページ/3ページ
布団に潜ると、慣れないぺちゃんこな布団だったのに、目を開けるともうすでに日が上っていた。
「あ、クリスさん。おはようございます」
「おはようございます!すみません、寝坊しちゃって」
「いえ、全然大丈夫ですよ!」
1階の食堂で朝食を一緒にいただき、何気ない話に花を咲かせる。
ネイぴょんはむき出しの柱にとまって、私があげたパンをついばんで食べている。
「イエローさんは、どこに向かわれているんですか?」
「ボクは昔の恩人を、探しに……クリスさんみたいに空を飛べたらよかったんですけど。
ボクは飛べないですから、鳥に乗って、旅をしているんです」
「鳥に?」
コーンスープを上品に飲み干して、イエローさんは笑みをこぼした。
「よかったら、会ってみます?」
***
イエローさんいわく、その鳥の名は『ドドすけ』。
おじさんが飼っていたらしいが、イエローさんの方が気に入られていて、イエローさんの恩人探しの旅に着いてきちゃったんだとか。
「昨晩は無理を言って、馬小屋に泊めさせてもらったんですけど……。あ、ドドすけ!おはよう」
きゅー、と切な気に鳴く鳥に、イエローさんの発言から大きい鳥なんだとわかってはいたけれど、驚いてしまった。
どう見てもダチョウだ。
しかし、種族だか何だか関係あるのか知らないが、全体的に淡い栗色だ、小さめだし。
確かにイエローさんが乗るには、ジャストフィットしてる、かも。
「イエローさん、私って宿代、どうしたらいいでしょうか」
「おかみさんが、特別サービスで半額分だけ、払ってくれれば構わないって言ってましたよ」
「ありがとうございました、イエローさん……!」
元から安めの宿屋だけど、半額の割引なら、私もこの先そんなに質素に暮らさなくともよくなる。
死活問題だっただけに、喜びもひとしおである。
「イエローさん、本当にありがとうございました。私、そろそろ行きますね」
「そうですか……修行、頑張ってください!」
言われた温かい言葉が嬉しいけれど、ありがとう、という言葉しか浮かばない。
なんて言ったらいいの?
とりあえず精一杯に、頭を下げてその場を去った。
***
「ネイぴょんー?」
『クリス、もう出発するの?』
「うん、そのつもり!行こう!」
ひょこひょこ着いてくるネイぴょんが、私を下から見上げた。
忘れ物がないかどうか確認して、バッグを無意味に持ち直す。
「イエローさんに何かお礼、できないかしら?」
『クッキーでも渡したら?』
「クッキーなんて持ってきていないわよ……あ、でもスケッチブックくらいなら」
『スケッチブックなんて持ってきてたの?』
バッグをまさぐって目当ての物を取り出す、幸い曲がってないし、目立つ汚れもない。
「ママがね、修行先の風景画を描いて送って、って言ってたの。でも考えてみれば、スケッチブックじゃあ送るの大変よね」
『でも、スケッチブックなんて喜ぶかな?』
「……分かんない」
分かんないけど、これくらいしか差し上げられるようなものが無いんだもの!
我ながら差し上げられるのもためらいそうになったけど。
宿代払ったら、その後にイエローさんに手渡そう。
後回しにして、とりあえず部屋を出た。