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なんと宿代、2500円なり。

安い、やっぱり田舎だからなのかな?

理屈なんてどうでもいい、財布が空にならなくてよかった!

さてはて、支払いを終えて軽い足取りでイエローさんと別れた馬小屋に向かうと、まだいらっしゃった。

ドドすけに草を食べさせているようだ、さて……どう切り出そうか。


「あ、クリスさん?」

気配か何かで気づいたのだろうか、パッと振り返られてちょっと気まずい。

イエローさん、何で気づいたんだろ……何はともあれ、スケッチブックをおずおず持ち直す。


「あの、何かお礼をできないかと、思いまして。こんなものでよければ、もらってもらえませんか?」

「ええっ、いいんですか!?」

喜んでくれる様子のイエローさんに、ホッとした。

けどなあ、何となく足りない感じがしてしまう。

これだけ私が助かったのだ、イエローさんの役に、私も立ちたい!


「……あ、」

そういえばイエローさんは。

恩人を探すために、旅をしているのだとか。


「もしよかったらなんですけど、イエローさんが探してる方、私も探すの手伝います!」

「それはさすがにお断りします……クリスさんは修行、しなきゃいけないんでしょう?」

「ゔ」

それはそうなのだけれど。

だけれど、お礼がしたくて。

何もできないけど、できないなりに何かしたくて。


「それなら、ボクのおじさんの住んでる場所の住所と、探してる人の特徴を言いますんで……
 修行の合間にでも、見つけたら連絡してもらえますか?」

「っ、はいっ!」

それはイエローさんが気を使って、私に提案してくれた譲歩案。

それなら互いに、ギブアンドテイクの精神にも反しないだろうし。


「数年前のことです」

イエローさんは優しくドドすけの頭を撫でながら、ささやくように話し出す。


「いつも一人だったボクを助けてくれたんです。彼――――レッドさんは」

「黒髪で、目は炎のように綺麗な、赤い色をしているんです。赤色と白色のジャケットと帽子を、よく被っています」

「明るい人で、そして誰より強い人です」

「こんな感じなんですが、」

イエローさんは私の手渡したスケッチブックに、備え付けられていた宿屋のボールペンでサラサラと絵を描いていく。


「見かけたこと……ありませんか?」

『僕は知らないよ』

ドドすけと仲良くなったのかしら、頭の上からネイぴょんが不意に口を挟んできた。


「私も……すみません、でも見かけたら必ず、連絡しますね!」

「ありがとうございます、お願い……しますね」

最後に笑ったイエローさんは、儚く見えた。



 恩返しの

 (彼から始まった恩返し)




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