激撮!少年少女の長い旅。
□はじまり
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Side/C
それはまさに俺からしてみれば、青天の霹靂だった。
だけど考えてみれば、分かりそうなことだった……あの職業病の、父さんのことくらい。
そもそもの始まりは、俺の一世一代の一言。
勇気を振り絞った、一言だった。
「旅に出ようと、思うんだ」
これを言うのに俺が、どれほどの勇気と時間を費やしたか
父さんは、きっと零コンマ一秒たりとも考えなかったろう。
父さんは目を輝かせ、間髪入れずに言ってきた。
「パープル……それは、本気で言って……いるのか?」
そう、ここまでは。
かろうじてシリアスみたいな雰囲気を保っていたのだ。
「……もちろん」
ごくり、と俺は生唾をのみこんだ。
反対されるかもとか、それでも俺は行くと決めたんだ、とか。
そんな未来を予想して。
真剣に慎重に言葉を選んで、俺は告げる。
「俺、パープル=ミラルナ=カマヘフは、本気で旅に出たいんだ!出たい!
つーか絶対行くから!いいだろう!?」
だけど父さんはすぐに満面の笑みで、こう続けたのだった。
「それ、いいぞっ!」
……へ?
予想していなかった言葉に思わずずっこけそうになる。
いや、そんな一昔前の漫画表現みたいなこと、しないけれども。
「その企画、絶対ウケるっ……高視聴率間違いなしっ……」
父さんはご存知コトブキシティの中心部近くに位置する『テレビコトブキ』で働いている。
新番組の企画に追われる部署に飛ばされたらしい……詳しくは知らないけれど。
「よし、それにしよう。いやあ助かったぁ。
上の方々から『各町々をアピールできそうな情報番組を作れ』って命令と
『ジム戦挑戦者を増やすことができるような新番組を作れ』
って命令がきてたからさあ」
「え?だから、え?」
意味が分からない。
俺のさっきの必死の発言と、父さんの言葉がつながらない。
どういうことなんだ。
「……完璧だっ!」
目を輝かせ、こぶしを握ってうれしそうな父さん。