激撮!少年少女の長い旅。

□はじまり
2ページ/11ページ


Side/C

それはまさに俺からしてみれば、青天の霹靂だった。

だけど考えてみれば、分かりそうなことだった……あの職業病の、父さんのことくらい。

そもそもの始まりは、俺の一世一代の一言。

勇気を振り絞った、一言だった。


「旅に出ようと、思うんだ」

これを言うのに俺が、どれほどの勇気と時間を費やしたか
父さんは、きっと零コンマ一秒たりとも考えなかったろう。

父さんは目を輝かせ、間髪入れずに言ってきた。


「パープル……それは、本気で言って……いるのか?」

そう、ここまでは。

かろうじてシリアスみたいな雰囲気を保っていたのだ。


「……もちろん」

ごくり、と俺は生唾をのみこんだ。

反対されるかもとか、それでも俺は行くと決めたんだ、とか。

そんな未来を予想して。

真剣に慎重に言葉を選んで、俺は告げる。


「俺、パープル=ミラルナ=カマヘフは、本気で旅に出たいんだ!出たい!
 つーか絶対行くから!いいだろう!?」

だけど父さんはすぐに満面の笑みで、こう続けたのだった。


「それ、いいぞっ!」

……へ?

予想していなかった言葉に思わずずっこけそうになる。

いや、そんな一昔前の漫画表現みたいなこと、しないけれども。


「その企画、絶対ウケるっ……高視聴率間違いなしっ……」

父さんはご存知コトブキシティの中心部近くに位置する『テレビコトブキ』で働いている。

新番組の企画に追われる部署に飛ばされたらしい……詳しくは知らないけれど。


「よし、それにしよう。いやあ助かったぁ。
 上の方々から『各町々をアピールできそうな情報番組を作れ』って命令と
 『ジム戦挑戦者を増やすことができるような新番組を作れ』
 って命令がきてたからさあ」

「え?だから、え?」

意味が分からない。

俺のさっきの必死の発言と、父さんの言葉がつながらない。

どういうことなんだ。


「……完璧だっ!」


目を輝かせ、こぶしを握ってうれしそうな父さん。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ