激撮!少年少女の長い旅。

□はじまり
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「で、父さん?俺は旅にでても、いいんだよな……?」

「あー?ああ、勝手にしろよもう」

まさかの適当な返答に愕然とする。

しばし唖然。

俺ってそんな適当な存在なのか……かなりヘコむ。


「で、父さんは何を思いついたわけ?」

見るからに『聞いて聞いてっ!』と
アピール(タンスから顔を出してチラチラ俺を見たり)していたので
仕方がなく、本当に仕方がなく聞いてみる。


「はっ、教えてあげよう我が息子よっ!
 新番組の企画さ……旅に出たい少年少女を全国から募集して、
 ジム戦を撮影するっ!

 一番最初にジムを制覇するのは誰かっ
 ……そんな投票したらウケるよな、絶対」

父さんはすっかり自分の案にご満悦。

確かにそんな新番組の案、思いつく人は少ないと思う。

しかも実の息子の『旅に出たい』という発言からとか。


「そうだなー、ナナカマド博士に解説してもらうとかいいかも。
 どうせならジム制覇した人をテンガン山の山頂に向かわせて、
 山頂で撮影班に待機してもらって……」

ナナカマド博士まで巻き込んでしまっているけど、大丈夫なのだろうか。

壮大な父さんの、前代未聞な計画は止まらない。


「そういえばパープルってポケモン一体も持ってないし……
 まあそこら辺はナナカマド博士にご協力いただこう。
 撮影始めるのはそうだな、
 やっぱ『始まりの季節』といえば、春っ!来春スタートっ!」

ノリノリだ(暴走ともいう)。

もうこの企画は成立したも同然というような感じで話している父さんだが、まだ決まってない。

父さんなら力技でなんとかしそうだ……恐ろしい……。


「じゃ、じゃあそういうことだから俺……」

父さんの勢いから逃れるために、自室へ逃げ込もうと腰を上げたときだった。

父さんが俺の手首をつかむ。


「パープル……、本当に……行くのか……?」

俺はこのとき、『父さんにも世間一般の“親心”があったのか』と驚いた。

シリアス再来。


「ああ」

短く言って、首を縦に振る。

……止めるんだろうか。

でも、俺は、行きたくて……!

とたん、コロッと表情を変えて笑顔で続ける父さん。


「じゃあパープルも番組作りに協力してくれよっ!
 なんたってパープルが言いだしっぺだしな!」



予想外だ。
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