激撮!少年少女の長い旅。
□勘違って!バトルして!
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Side/A
歩き出した少女の姿を追い、数人のカメラマンが動き出す。
「A班、作戦変更!209番道路へ向かえ!
繰り返す、A班、作戦変更!209番道路へ向かえ!」
『A班、先回りし念のためロストタワーで待機します!』
小型のトランシーバーから部下の声を聞き、
満足そうにうなずいてもう一度通話ボタンを押すルース。
その顔には先ほどまでのオレンジとの会話で見せた穏やかな表情はなく、
真剣な面持ちである。
「作戦Fで頼んだぞ、A班!」
『了解しました!』
これならオレンジの尾行(隠し撮り)も順調に行える……。
ルースがほっとしたのを感じ取り、近くにいたカメラマンが声をかけた。
「ルースさん、さっきオレンジちゃん『カンナギタウンに行く』って言ってましたよね」
「ああ」
えっと、と詰まりながらも続けるカメラマン。
「向かう先は209番道路の方向です……このままじゃ逆走して、
ヨスガシティに行ってしまいますよ?」
「そうだな、なんだお前、そんなことを気にしていたのか?」
カメラマンの言いたいことが分かったルースは軽く笑った。
「目的地は反対の道から出ないと行けないことを教えなくていいのか?
……どうせそんなことを、悩んでいるんだろう」
「はい、教えてあげないと、このままじゃ……」
「でも仕方ないだろう?」
はは、と爽やかに笑うルースは小声だが威圧感のある言葉を続ける。
「これはあの子の、旅なんだからな」
部外者が教えるなんて論外だ。
自分で考えて行動して、それこそが旅の醍醐味―――視聴者の気になるポイント。
「ぶっちゃけ道に迷えば迷うほど、自己嫌悪に陥れば陥るほど、
悩めば悩むほど、いい画が撮れることはない。番組的には万々歳だろう?」
「………そうですね」
カメラマンは若くしてルースが上司として君臨していることを、なんとなく納得した。
他人の幸福より番組を優先する姿勢……。
これで昇格しないほうがおかしい。
「変なことを言ってすみません、撮影、頑張りましょうね」
誰にも注意をしてもらえず、こうして彼女の旅は幕を開けたのだった。