激撮!少年少女の長い旅。

□勘違って!バトルして!
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「って―――あれ?」

目の前の巨大な建造物に足を止め、思わず間抜けな声をあげてしまった。

これはどう考えても……“魂が眠る場所”、ロストタワー。

おかしいな、わたしが目指していたのは“カフェ やまごや”なのに。

しぼりたてのモーモーミルクが飲みたかった……。


「あ、クサキ」

パーカーのポケットから顔をのぞかせているモンスターボールが、ぷるぷると震えた。

クサキ―――わたしの最初のポケモンのナエトル―――が
ボールの中から心配してくれてるみたいだ。


「ごめんね、道を間違えちゃったみたい……でも、大丈夫!」

幸いまだ、日は高い。

これもジム戦とは関係ない場所なんだけど、でも、きっと許されるよね。

まさか付いてきてるわけでもないだろうし、バレないよね、きっと。


「ロストタワーだよ、クサキ!ちょっと中をのぞいてみよっか」

『えるっ!』

同意するかのようにボールの中からでも声をあげてくれるクサキ。

寄り道兼、見学することに賛成なんて、どうかと思うけどね。

ポケモンが出てくるのは確か2階から。

トレーナーも2階にしかいないし、きっと大丈夫!

な、はずなのに。

………ぞわり。

入ったとたんに寒気を感じた。

背筋がぴん、となる。

怖いとか考えちゃ駄目!

亡くなったポケモンに失礼だと思う。


「わたしの知り合いの人のポケモンはみんな長生きで、
 実はここに来るのは初めてなんだ」

近所の子が夏に、肝試しをやっていたと思う。

不謹慎だし罰当たりだし、参加しなかったけれど。

でもちゃんと近所のことは―――シンオウ地方の知られている場所は調べてある。

なんたって、わたしのおうちは新聞社。

調べ物をしておいて損はないし、旅に出る上で知っておいたほうが得だよね!

母さんの受け売りだけど気にしない。

調べ物は趣味でもあるしね。


「ああ、“社長”って呼ぶべきかな?」

母さんが、くちぐせのように言っていた言葉を思い出す。


「今日からしばらくは………会えないんだよなあ……」

センチメンタルな気分になってしまった。

せっかくの門出なんだから、もっと笑顔ですごしたいのに!


「よし、クサキ!カンナギタウンに向かおうか!」

路線を元に戻そうとしたところだったのに。


『ヤミィーッ!!』

2階からポケモンの苦しそうな声が響いてきた。
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