激撮!少年少女の長い旅。

□自称『神様』の降臨
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Side/B


「もう、どうしたら面白く撮れるんだろう……!」

頭を抱えるアソンに、部下は軽く笑った。

「自分は、捕獲だけでも十分作戦を考えているオーカーちゃん、面白いと思いますけど」

「はあっ!?」

ふざけんな、と言い出しそうな剣幕のアソンに、思わず部下はたじろく。


「そんなに怒らなくても……」

「怒ってるんじゃなくて悩んでるんだよ。
 だって普通はマサゴから出発して、どこに行く?」

現在地を苦々しく見つめ、それこそ苦笑しながらたずねるアソン。


「普通ですか……コトブキシティに行くんじゃ、ないですかね?」

「そうなんだよ!」

分かってくれるか、と言わんばかりのアソン。

この人、そーとーストレス溜め込んでるなあ。
部下は思うが、口に出さなかったそうだ。

口に出していたらどうなっていたことか。

……確実に愚痴を聞かされていたことだろう。


「なのに何を血迷ったかオーカーちゃん、シンジ湖までさかのぼって!
 そして戻ってリスタート!?……前に進んで欲しいんだけどな」

「そういうこともありますよ。
 オーカーちゃん、着々とポケモンを増やしてるじゃないですか」

そんな彼らはオレンジも道を(間違えてだが)、リスタートしたことを知らない。


「ああ……まあ、そうなんだけどさ」

曖昧な返事をするアソン。


「今の手持ち、ポッチャマとムックルだろ?初歩の初歩じゃんか」

「それ以外は全部、ボックスに送ってましたからね……」

同じポケモンは捕まえない主義らしく、時間をかけてポケモンを捕まえては、
研究所に転送していた。


ジョーイさんの「いらっしゃい!」という言葉を何度聞いたことだろうか。

心なしか笑顔が引きつっていた気もする。


「でも明日は、進むんじゃないですか?」

「そうか?」

そうですよ、となぜか自慢げに語りだす部下。


「ここのあたりのポケモン、コンプリートしたじゃないですか」

「そうだけど……それに彼女、気づいてないだろ?」

「いや、それがどうも気づいてるっぽいですよ」

何でそんなこと知ってるんだ、と言いたげに顔をしかめるアソン。


「ジョーイさんが聞いてたのを、聴いたんですよ……マイクから」

「そういやあナナカマド博士も協力的だよな、あのポケモン図鑑に
 盗聴器と盗撮器の機能までつけて。
 その上バトルの展開も記録できるんだろ?」

知らされていなかったのか、部下は少し以上に怪訝そうにまゆをひそめた。


「それって……犯罪じゃないですか?」

「違うよ、セーフ。親に了承得てるし。
 あ、オーカーちゃんは両親共に死別してるから、
 保護者代わりのナナカマド博士に、だけどな」

それはフォローになってるのか?


「それより、さっきの続き!何を聞いたんだ?」

子供っぽいなあ、と思いつつも話す部下。


「ジョーイさん、皮肉かもしんないですけど『次の町には行かれないんですか?』って聞いたんですよ」

「絶対にそれは皮肉だろ」

ジョーイさんが皮肉を言うなんて、と少しショックを受ける部下。


「で、オーカーちゃんは『はい、明日には行くつもりです』って……」

「おまっ、なんでそれ、速く言わないんだよ!?」

大慌てで怒鳴るアソン。


「へ?まずいことでもあるんですか?」

きょとん、とする部下にアソンは舌打ちした。


「当たり前だろ!?先回りしないと正面からの画が撮れない!
 先回りさせるから寝てる奴起こして来い!」

「ええっ!?」

アソンは怒鳴りつつも予定を練る。

コトブキシティまで一気に行くつもりか?

だったらコトブキシティのいたるところにカメラマンを配置しないと、
どこに立ち寄るかも分からない……。

部下は『ひぃぃっ』と言いながらもカメラマンを起こしている。

寝起きの悪い奴からパンチをくらっていたりしたが、
……見なかったことにしよう、と思うアソン。


「明日は忙しくなりそうだ……」

速くも波乱の予感を示唆させるような言葉を一人つぶやく。


「よし、みんな起きたか?作戦会議を始める!」

「「「うすっ!」」」

息がぴたりと合う。


「うるさいっ!」

どん、と叩かれる壁。

とたん、静まり返って小声で再開する会議。

隣の部屋で会議が行われていることもつゆ知らず。

オーカーは壁を叩いたことにより、安眠を手にしていた。
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