激撮!少年少女の長い旅。

□凍ったままの時間
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「図鑑……?」

相変わらず騒音は続いている。


「僕のは鳴っていないのに……」

言いながら自分の図鑑を手探りで触って。

そういえばケレスのマグマッグの視界を奪うために燃やして再起不能にしたんだっけ、と思い出す。

ならば図鑑は鳴って当たり前?


「とりあえず、開いてみて」

「は、ハイッ!」

かちゃ、と素早く図鑑を開く少女。


『ディアルガ、じかんポケモン。
 時間を操る力を持つ。シンオウ地方では神様と呼ばれ、神話に登場する。
 ディアルガが生まれたことで、時間が動き出したという伝説を持つポケモン』

流暢に、淀みなく。

図鑑は情報を正確に知らせてくれる。


「ディアルガ?」

「……あ、もしかしたら」

開いたとたんに音が止み、静まり返った空間で少女は図鑑を閉じて。


「ネイビーさんは、ディアルガの力で“時間を止め”られていたんじゃないでしょうか?」

「時間を止められていた?ディアルガが僕に、そこまでする義理は無いだろう」

「そうでしょうけど……タイミングから、状況から、何もかもを説明できるじゃあないですか」

そうかもしれないけれど。

いや、そうじゃないにしても、やけに―――辻褄が合いすぎる。

解釈するのが、容易すぎる。


「ディアルガ、か……」

案外答えは簡単で、僕らが難しく考えすぎている、だけなのかもしれない。


「ポケモンセンターに行くけど、君も来る?」

少女を振り返り問うと、少女はぱっと表情を明るくさせた。


「行きます!」

魔法みたいだ、なんてしょうもないことを思いながら歩く夕暮れ空。


「あ、」

「どうかしたの?」

ポツリ、と少女の漏らした声は何だかどこか、楽しそうで。


「さっき、図鑑が鳴ってうやむやになっちゃいましたけど」

わたしに何を聞こうとしてたんですか?

純真な瞳に見つめられ、ぴしっと体がひきつった。


「……名前」

それでも僕は。


「名前、聞いてなかったから。聞こうと思って」

「ああ、そんなことですか。わたしはオレンジ=ローク=ガレロスといいます。
 旅に出てから数日しか経たない新米ですけど、ネイビーさんの噂、色んな所で聞きましたよ」

「え、何それ。僕の噂?」


彼女と話したいと、思ったんだ。
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