激撮!少年少女の長い旅。
□撮影準備
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Side/B
「これは……?」
ナナカマド博士から手渡されたパンフレットに目を奪われた。
何故か博士からファッション誌をいただいてしまった。
旅に出る格好を工夫しろと言うことだろうか?
それとも普段着がダサいから気を使って下さっただけ?
思考を巡らせながらも『これはどういう意味ですか』と目で問いかける。
「それはな、前に言っただろ……撮影の話」
「はい。」
覚えています、そこは。
返事ひとつで分かってもらえるかは不明だが相槌のように言う。
だから博士、書類から顔をあげて顔を見てください。
私が目で尋ねてるのを察してください!
「なんでも、その雑誌の服から選んでテレビコトブキに言えば、郵送してくれるらしい」
「え?」
「実はな―――」
ナナカマド博士は教えてくださった。
何故最初からきちんと教えてくれなかった、と思うが顔には出さない。
「博士、何がいいと思いますか?」
「オーカーくんの旅だ、オーカーくんが決めるといい」
むう、悩んでいたのにあっさりとかわされて残念。
「カバンや靴も、なんですよね……どうしようかなあ」
今時のファッションなど分からない。
私の旅の目的は図鑑完成なのだ、やっぱり動きやすい服装がいいな。
「これとか、どう思いますか?」
「色が……奇抜だな」
蛍光色のパーカーに嫌悪を表す博士。いえ、そっちじゃなくて。
「まあいいや、これを頼んでもらえますか?」
私はとにかくスポーティーで動きやすそうな格好を選んだのだった。
「いっそのことコンタクトにしようかな」
黒ぶちのメガネを眺めながら何気無しに呟くも、博士は無視。
雑談くらいしましょうよ、博士。
「色はどうするんだ?」
「わっ…………色ですか」
唐突に、何の脈略も無しにぐい、と首を伸ばし雑誌をのぞく博士に驚く。
「そうですね、青、とか」
自分の好きな空の色を言うと、博士は『そうか』と呟いた。
特に言うこともないんですね……。
博士の研究を手伝う“日常”はもうすぐ終わると言うのに、
普段通りの博士に少し寂しさを感じた。
けど、そんなこと、私にはどうしようもできなかった。
撮影準備!
(だから私も、何も言わなかったの)