激撮!少年少女の長い旅。

□転機の日
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「ちくしょー……」

キッと睨み付けるものの、トレーナーの俺が睨み付けたって意味は無い。

だからこそ不甲斐ないと言うか、申し訳ないと言うか。


「悪い、もう少し頑張れるか?」

「ひぃこ……」

自分よりも小さな、だけど頼もしい相棒は『とりあえず頑張ります』と
言うかのごとく自信なさげに口を開いた。

まだ心を開かれてない現状。

仲良くなりたいのに何故かなついてくれない。

恥ずかしがりだから仕方ない、と思い込もうとすればするほど虚しくなる。


「びぃぃぃっ!」

「うあっ、避けろ!」

敵対しているビッパが突然飛び掛かってきたのを間一髪でかわすヒコザル。

トレーナーズスクールで成績がよかったのも実戦ではあまり関係ない。

だっていつもペーパーテストしかなかったし、と言い訳をするのは何回目だろうか。

我ながら悲しすぎる。

野生のポケモンとの連戦で疲れを見せているヒコザル。

俺が悪いんだよな、全面的に。

雑魚キャラとして有名なビッパにやられそう、なんてシチュエーションは。

ビッパにひどい気がするけど放っておいてほしい。

何たって今、やられそうなんだし。

回りを見渡すも、あたりは真っ暗。

ここから野生のポケモンに見つからないようにポケモンセンターに向かうのは
かなり大変そうだ……考えたくもない。


「ヒコザル、“ひっかく”だ!」

とりあえず勝とう、と目の前の勝負に口を出す。


「びっぱあっ!」

だだだだ、と地を蹴りかけてくるビッパ。

小さいくせに、気が弱くなっている今だからだろうか、とてつもなく怖い。

ビッパに恐怖を抱く日が来るなんて、思ってもみなかった。

「今だ、避けろ!」

ぴょん、と『ひっこ!』とか言いながら攻撃を避けるヒコザル。

ん、ちょっと待てよ?このままビッパが走り続けるとぶつかるんじゃね?

ヒコザルが避けきってもなお走り続けるビッパに、思わずそんな考えがよぎった。

いやいや、まさか。

楽観視したいけれどビッパの目を見て悟った。


―――こいつ、マジか。

目が本気だった。

俺が睨み付けたことを気にしているのだろうか。

気にしているのなら謝ります、ごめんなさい。全力でごめんなさい!

今更ながらに腰がひけて低姿勢。

ああ、何してんだろ、俺。
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