激撮!少年少女の長い旅。
□コケて!騒いで!やっちゃって!?
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Side/A
「えっと、またこの道、かあ……」
テンガン山にて、タウンマップを除きこんで、現在位置を推測してはくるくる回す。
完璧に完全に、言いわけの余地もないくらいに、誰がどう見ても道に迷った状況下だった。
後ろから着いてくるネイビーさんにとっても申し訳ないが、もうお手上げだ。
「すみません、道に迷ったみたい、です」
「だろうね」
「うう……」
無表情にすぐ返された言葉に、心が痛む!
でも事実だしね、うん、しょうがないんだけどね。
「ネイビーさん、その、道とか分かったりしませんか?」
「僕はジョウト出身だって言ったでしょ、テンガン山を登るのは初めて」
「へ?じゃあどうやってカンナギタウンに行ったんですか?」
「空を飛んで」
ああなるほど、と理解するけど。
何の解決にもならなかった。
むしろ希望の光が裁ち切られたと考えてもおかしくなかった。
「どうしよう、クサキ……」
どうしようもこうしようも、何にも無いのだけれどボールを取り出して。
パートナーに話し掛けると、励ますようにうなずいてくれた。
そうだよね、まだ山を越えられないと決まったわけじゃないしね!
「ネイビーさん、今度はこっちの道に行ってみましょう!もしかしたら出口に繋がってるやもしれません!」
「そこ、行き止まり」
「……く、暗くてよく見えないだけかもしれませんよ!」
「さっき通った」
「………………。」
ぐうの音も出ないとは、このことだった。
しかし諦めるには早いような気もするのだ、
いや、諦めたらここに一生居続ける以外に無いんだけどね!
何とか脱出法を考える……
と、ネイビーさんはそんなに切羽詰まっていなさそうなのが気になった。
白色ベースの、アクセントのように赤・青・黄の四角形の模様が付いているタマゴを
大切そうに抱き抱えて。
どこを見ているのやら、一言も発せずに遠くを見つめるネイビーさん。
「ネイビーさん、そういえばどうしてタマゴを抱いているんですか?」
「……博士にもらったから」
「何のポケモンのタマゴなんですか?」
「分からない。珍しいポケモンらしいけど、生まれたら分かるだろうって、聞けなかった」
世間話が、ちょっと噛み合っているかも分からなかった。
前に記事として扱ったから、ジョウトのウツギ博士がポケモンのタマゴについて研究しているのは知っていたし、
もらったのはうなずけるけど。
抱き抱えるトレーナーは、少ない。
大抵の場合、そもそもタマゴ自体珍しいんだけど……
ポケモンセンターで機具を無料でゲットできるから、割れないように機具に入れておく場合が多いのだ。
どうしてなのだろうか。
その他にも―――私は、ネイビーさんについて何も知らないと言っても過言じゃないのだ。
正義のために遠方の地に赴き、氷漬けにされていた彼のこと。
何にも、知らないから。
自己プロフィールやらなんやら、そういうのじゃなく、
もっとちゃんとネイビーさんのことが知りたいんだ!
「ネイビーさ、」
「もう日が暮れる」
いつの間に取り出したのやら、リュックからポケギアを取り出して時間を確認するそぶりを見せる。
「? どうかしたの?」
「いえ、何でもないで、す」
無垢な双眼に見つめられ、聞こうとした言葉は宇宙の彼方に飛んでいってしまった。
ネイビーさん、あなたのことがもっと知りたいです、なんて、
今時下手なドラマにも採用されないような台詞。
なんて歯の浮くような台詞。
「じゃあ、そろそろここから出ようか」
わたしはつい、ネイビーさんに出会ってから初めてであろう、大きな声を出してしまった。
「案があるなら、早く教えてくださいよ!!」