激撮!少年少女の長い旅。

□コケて!騒いで!やっちゃって!?
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『ホー!』

「っ?」

ヨルノズクが鋭く声をあげて、慌てて振り返る。

ネイビーさんの頭上、遥か彼方、遠くから。

どうやら落石があったようで。


「ネイビーさん!!」

タマゴを腕にしっかり抱いた、危険な状況下なのに無表情を保ったままの彼は。

わたしが叫んだことさえも、無意味であるかのように。

ヨルノズクが鳴いたことさえも、無駄であるかのように。

あからさまにため息をついて。


「本当、迷惑な連中だ」

自嘲気に呟いた。

避けようともしないから、当然、重力にしたがって岩石がネイビーさんの頭を直撃――――― 



―――しなかった。

かは、と。

幻聴のように悪夢のような男の、独特の笑い声が耳障りに聞こえだして。

体が、怖がる必要性なんてもうないのに、震え出してしまう。

無意識のうちに。

あの笑い声が、恐怖に変換されているようだ。

条件反射のように自然に震え出す肩を、自分で押さえつけた。


「こんな早くに再会できるなんて思わなかった」

「俺もだぜ、かはかはかは。お前ら、俺に発信器でも仕掛けてたのか?」

くすんだ金髪の男の、プルートイド。

ネイビーさんの話を聞いたあとだから、迷いなく悪人と言い張れる。

敵は、ケレスは、かはかはと笑いながら話す。

ネイビーさんが見つめる、闇の奥から。

姿をあまり、はっきりとは見せずに話す。


「お前らがあんまりにも早く俺の隠れ家の近くに来るもんだから、ビビったぜ?」

「………」

「しかも俺のあとをピッタリ付いてくるしよ。真上に逃げた俺に気づかず、通過したときはホッとしたんだが。
 やはりお前を殺るのは難しいみたいだな」

「…………ふうん」

被害妄想も甚だしかった。たぶんそれ、ただの偶然です。

道に迷ったのが、幸か不幸か、そんな結果をもたらしただけで。

ネイビーさんも真実を伝えるのも面倒なようで、適当に返した。


「出口間近で、心臓麻痺によるショック死を狙ったの?
 普通に岩雪崩を起こした方が確実だったろうに」

「それだとサツが動くだろう?」

「そりゃそうだ」

プルートイドの、ケレスは理解できない。

わざわざ幻覚で岩雪崩を見せて、殺そうとしたなど。

ヨルノズクの“みやぶる”がまだ、生きている範囲内にいたネイビーさんに、みやぶれないはずも無いのに。


「美学が、理解できない」

「理解されたいなんて、思ってねーからいーよ。それより、お前ら、」

ネイビーさんとの淡々とした会話に飽きたのか、唐突に雑談を強引に区切って。

にやり、と厭らしくケレスは笑った。

いつものように、かはかはと言うこともせずに。



「今すぐ本当に殺してやるよ」
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