激撮!少年少女の長い旅。

□帰郷を待ちわびて
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「坊主、こんな夜更けにすまんが、ちょいといいか?」

「はい」


幸い、ポケモンを部屋に出していたことはバレていないようだ。

ポケモンの中には体重がかなり重いのもいるから、
原則として宿泊施設を利用するトレーナーは
ボールから出してはいけないことになっている。

そりゃ、耐震性の問題もあるだろうし分かるけど、何たって僕は心配だったんだ……
これからはしないつもりだから、その辺りはきちんとするつもりだけれど。


「お前さんの自転車のことなんじゃが……」

「あ、自転車」

正直、すっかり忘れていた。

そんなものもあったなあ、という感じ。


「すまんな、雨ざらしだったせいで錆ついておる。これからも使うか?」

「……処分、できますか?」

「おお、処分してしまっていいのか?だったらやっておくが」

「お願いします」

あの自転車は、カンナギタウンに来たばかりの時に
同じくカンナギを訪れていたシロナさんとかいう長老の孫にもらった物だ。

何でも、シンオウで活躍した子のお古だとか言ってた。

よかったら使って!と、やけに気さくに言われたのを覚えている。

しかし錆つかせちゃったらなあ、悪いけれど使うのはちょっとご免だ。

僕はホーがいるから、いざとなったら空を飛んで移動すればいいわけだし。


「すまんな、きちんと片付けておけばよかったんじゃが……
 すぐ帰ってくるだろうと、そのままにしてしまっての……」

「いえ。僕なんかより、お孫さんにお詫びをしておいてください。
 頂いたのに乗れなかったので」

長老はハア、と盛大にため息をはいた。


「シロナのことか……シロナもシロナで勝手にお前さんの名前を自転車に書くわ、自分勝手で……」

ぶつくさ言い出してしまい、行き場をなくす。

僕ってこういう場合、部屋に戻ってもいいのだろうか。


「夜更けに重ね重ねすまんな、ゆっくり休むんじゃぞ?」

「はい。ありがとうございました」

去っていく姿を見送って、部屋に戻る。

何の話かと思ったけれど、大したことない内容で良かった。

ベッドに置いたタマゴをそっと撫でると、少し動いた気がした。

まだ生まれる気配は無いけれど、いつごろ生まれるだろうか。

さっきと同じような、だけど1番楽しみなことを考えだしとみると、
トントンと控えめなノック音。

また来訪者のようだ、誰だろう?

オレンジだといいな、と何でかちょっと期待したけど、そんなはずないことは分かってた。
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