小説
□恋歌を君の隣で
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(※学パロ CPは特になし)
その日のプラチナの気分はというと、最高に悪かった。
今日は休んでしまえばよかったです。
らしくなくそんなことを考えてしまうくらいに。
生まれが名家なのは、シンオウ中の名家のご息女・ご子息が通うこの私立校では大した意味をなさない。
だがプラチナは幼い頃から博士に見込まれるほどの才識を持ち、なおかつこの美貌である。
先週末に公のものとしてきちんと誕生パーティーが催されたのだが、それでも手渡されるプレゼントは後をたたないのだ。
ため息もつきたくなるだろう。
もっともそれは、今日こそ本当の誕生日なのだから当前といえば当然なのだけれども。
そんなこんなでプラチナが一息つけたのは、あまりいいことではないのだが授業の間だけだった。
「ダイヤモンドも、パールも……元気でしょうか?」
学校も違う、住む地域も違う彼らと出会えたのは、本当にただの偶然で、
だけれどもそれは運命の出会いだったのだとプラチナは感じている。
二人とも大好きなのだ。
それは恋愛感情なんかを越えていて、二人もそんな気持ちだと分かっている。
繋がっている、分かり合えている。
言外でそう思いあえるのは彼ら以外にいない。
一期一会とはこのことに違いないだろう。
集中しなければならない授業も、今日は右から左へ流れていってしまう。
そもそも予習の段階で分かっていたことなのでこの辺りの話しは別段聞く必要性もない。
プラチナは教壇にたつ教科担当の教師にバレないようにため息をついた。
学校が違うということは、利点でもあるが欠点でもある。
利点を例としてあげることができるならば例えばそれは、自分が
シンオウでも有数の名家出身だということを知らなかったり、たまに会えた時の喜びの大きさだったり。
しかしまあ欠点の方が多いことは明白だ。
今のように、彼らに毎日は会えなかったりだとか、毎日は話せなかったりだとか。
たまに会えた時の喜びだなんて、自虐もいいところである。
この教室内に二人がいてくれたらいいのにと、楽しかった日々を思い返しながら
もう何度目かになる実現不可能なシュミレーション。
席は、そうですね、後ろの方で。
私の前がダイヤモンドで、ダイヤモンドの左隣にはパールが座るんです。
お昼が近づくと、時計を気にし出してソワソワするダイヤモンドに、パールはきっと先生に
感付かれないよう気を付けながら叱咤するのでしょう。
私はそんな二人を後ろから見て、クスクス笑うんです。
「…………なんて、虚しい想像ですね」
この学校の清掃は業者が行う。
二人に言った時には、目を丸くされ、普通とは違うのだとようやく理解したことはまだ記憶に新しい。
怒濤のように渡されるプレゼントから逃れるように迎えの車に乗り込むと、
所狭しと右にも左にも大小様々なプレゼントが置かれているのだからうんざりしてしまう。
さすがに気が滅入ります、小さく呟けば現実味が増して頭痛がしてきた。
呟かなければよかったと後悔したが、それももう後の祭りだ。
「お嬢様、お手紙が届いていますよ」
運転席の執事に言われるも、誕生日祝いの形式的なものばかりだろう。
二人に会いたいと、また、しかし今度はより強く思った。