小説

□さいごのひとくち
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曰く、栗は食べると元気がでるんだとか何だとか。

もぐもぐ口にほうばっている黄瀬がそう説明しても、
聞いたのは青峰の方だというのに彼は興味無さげに「はーん」とだけ呟いた。

次にひょいと、ごく自然に青峰は自身の口に栗を運ぶ。


「うあ、何するんスか青峰っち!?」


「何って、だったら俺も元気もらおーと思ったんだよ」


悪いか、小さな子供のような反論に思わず言葉を詰まらせれば、青峰は勝ったかのように口角を上げる。

その姿がしゃくにさわるわけではないのだけれど、何だか言い様のないモヤモヤに心が占領されてしまう。

言葉にならない叫びの後、黄瀬の口から飛び出したのは
「ひどいっスよ青峰っち!」という、自分でもあきれるほどに普通な反応だった。


「ほしいんだったら、一言言ってくれればいーじゃないっスか!」


「わざわざ言わなくてもいーじゃんかよ」

たっりぃ、ポケットに手を突っ込んだままに漏らされて、ぐっと言いよどむ。

青峰が勝手に人の食べている物を食べたりするのは、今に始まったことではない。

それ故の言葉なのだろう、黄瀬にだってそのくらいの察しはついた。

だけれど。


「い、いやっス」


「は?」


「だから、いやっス!」


明確な反対意見を浴びせられ、面食らったように、
意味不明だと言うかのように頭をがしがし乱暴に掻いて、ため息をつく青峰。

剣呑な態度で黄瀬を睨んでから、シワの寄る眉をそのままに「何がだよ」と小さく問うた。


「勝手にものを、食べることが。一言くらい、これからは言ってから取ってほしいっス」


「んだよ」


面倒だ、と心から思うように深く眉を寄せて青峰は栗をようやっと飲み下したようだった。


「変な奴だな、黄瀬って」


「今さらっスよ」


だな、否定もしない青峰にいつものようにヒドッ!?と言葉を投げ掛ける。

心なしか柔らかくなった口調で、そういえばと背中を向けたままに顔だけ向けられた。


「元気でるからって栗を食ってたのか?」


「え、何、もしかして青峰っち、心配してくれてるんスか?」


「ちげーよ調子乗んな黄瀬」


釘を刺すような言い方だ、冗談だと思いながら言ったつもりだったのでそんな反応に少しばかり驚いた。


「食欲の秋っスから」


「…………うぜー」


不遜に言い捨て、今度こそ青峰は行ってしまう。

黄瀬は姿を見送って、それからもう一つ手にとり口にする。


「青峰っちがこの栗を取ったのも、食欲の秋だからっスかねー?」


ごくり、飲み込んだ木の実は下にくどすぎない甘味を残してくれて、
水で流し込んでもしばらくは口の中が、なんだかちょっと甘かった。



 さいごのひとくち

  title by:休憩







意味不明。
栗の話しかしていないですねごめんなさい。

不意に書いたので雑クォリティ。
どうして黄瀬と青峰かというと、これまた深い意味もないという残念っぷり。

キセキの中なら黄瀬が一番好きだけど、私の本命は謝りキノコこと桜井くんだけです!()

青峰とか初めて書きました……

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