小説

□憂い子は眠れない
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(レイエ)



※学パロっぽい








無視しようもないのだからどうしようもない、
どうしようもないといってもどうしたらいいのか分からない。
どうにかしなくてはいけない。

そんな思春期特有の悩みのような蟠りをボクは、
ばふんっと枕に勢いよく顔を埋めて拡散させた。


「うう……どうしよう。どうしよう、もう明日になっちゃう」


カチカチ正確に時を刻む目覚まし時計を見やれば、そんな頃合いで。
はあ、ついた息は迷いをより深くに追いやっただけだった。
迷宮入り。
これからのことも、この気持ちも。

暖かな気持ちを想って目を閉じれば、つかの間の安息が訪れる。
カッコよくって、勇ましくって、頼りになって。
明るくって、一緒にいると楽しくって、回りの人を笑顔にして。


「レッドさん」


きゅう、胸が苦しくなる。
締め付けられるような、痛いような苦しいような、それなのに暖かい。
呟く度に明確になっていく感情。

ボクはその名前を心の中でつぶやいて、恥ずかしさからまた枕に顔を埋めた。
お風呂上がりだってことを除いても上昇している体温は、なかなか引きそうにない。


「…………好きです」


口に出してしまえば、くすぐったいような感覚が全身を駆け巡った。
先ほどまでの苦しさは息を潜めてしまって、言い知れない想いが背中をくすぐっている。
ボクの気持ちを試すように。

熱がどこかに飛んでいってしまえばと思い、躊躇ってからいいだろうと結論付けて
ベッドの上でゴロゴロ数度転がった。
机の上の卓上カレンダーを見なくとも、明日―――もとい既に今日―――が
何の日かということくらいは分かりすぎるくらいに分かっている。

バレンタインデー。

お菓子会社(主にチョコ会社)の策略により全国的に広められた
この文化的習慣は、好きな男子に女子がチョコを送るものとして知られている。
それでも友チョコの存在が頭角を表してからは後、
本命チョコを送る女子は年々減ってきているらしい。
朝のニュースでそう言っていたことを思い出した。

横になったまま時計の針を眺める。
眺めていてもどうにもならないことは分かっているのだけれど、見てしまう。


「はあ…………」


そうはいっても、好きな人がいる身としては気にしてしまう。
渡してしまおうか、と考えてしまう。
恥ずかしくて渡せない、とも。
相談するわけにもいかず、自分で決めるしかない問題だ。
こればっかりは。

ため息は感嘆のようにこぼれた。
静かな部屋に響く時を刻む音は大きすぎる。


「レッドさん。レッド、さん」


名前を呼ぶだけで高鳴る胸、彼のことしか考えられない。
ボクはおかしい。
何度目かの考えに至り頭をグリグリ、枕に押し付けた。

毎晩のように悩み続けて同じことばかりしていたので、枕は最早へなへなになってしまっている。
ちょっと悲しい。

夜がゆっくりと更けていく。
何だか寒い気がしてきて、ぶるりと体が震えた。
答えはまだ出ない。


「どうしよう、なあ」


途方にくれてしまう。
自分の決断力の無さに。

ああもう!
力ないものの降り下ろした拳が、埋まる。
明確な答えがほしい。
どうしたら正解なのか、正しいのか。

教えてもらうわけにもいかない問題の答えは、誰なら知っているんだろう。
いつからそういうものを、自分一人で何とかできるようになれるのだろう。
もんもんとした膨らんだ思いを、シャワーで水と一緒に流してしまいたくなった。
熱いお湯で震える体を暖めながら。

お風呂にはもう入ってしまったから、それもできないのだけれど。



 憂い子は眠れない



























素敵タイトルは休憩様から。
何でしょうねこれ……バレンタイン関係あるのか。
レッドさん出てこないし、チョコ渡してないし、そもそも渡すか渡さないかで悩んでいるという。

もだもだを意識したら、もだもだというかむしろモラトリアムみたいになりました。
ご、ごめんなさい……!

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