小説

□流氷セカイの幕開け
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(※大人ちさき→中学生光)



自分はまなかを追って飛び込んで、それで。
そこまできてやっと思い出した。
眠ってしまったんだ。

とりあえず、と紡の住む家に向かおうと車に押し込められて、運転席に座る紡に違和感がぬぐえない。
俺たちさっきまで、お船引やってたのに。

俺が眠っていた間のことを紡はゆっくりと説明し出した。
潮流の影響で何故か近付けなくなった汐鹿生、たぶん眠りに付いたんだろうみんな。
美海もさゆも中学生になっていて、同い年になってしまっている。

そして最後に伝えられたのはたった一人取り残された、ちさき。


「え!?」


要もまなかも、戻らなくて。
だからこそ名前が出なかったことに疑問を持たなかったわけではなかったけれど。
ちさきだけが。

変わりたくないと泣いていた、あの日のちさきを思い出した。
変わりたくないと願ったあいつが、一番、進んでいってしまった。
俺らと、別れて。


「光……!」


再会を、ちさきは意外なほど冷静に受け止めているようだった。
俺の知っているちさきなら、泣いて、怒ったように心配したんだからねと俺を勝手に抱擁したことだろう。
場所だとか格好だとか、そういったことは一切考えずに。

空白の年月は、こわい。
ちさきは変わっちまったんだなと、口の中で呟いた言葉は鉛のように重くて、苦くて不味かった。


「私、ずっとずっとみんなに会いたかった。
光も要も、まなかも、お父さんもお母さんも鱗さまも。みんな会えなくて……」


ぼろぼろ、何かが吹っ切れたのかこぼれ落ちる大きな雫は、まっすぐに落ちていく。
ああ、こんなに変わったけれどちさきは、ちさきだな。

ぎゅっと堪えるように目をつむり、瞳の端に残っていた粒を指でぬぐうと、ちさきは心からの笑顔を俺に向けた。
そのまま「ありがとう」と言われて照れ臭くなる。
俺は、何もしてないから。
してやれていないから。


「ねえ、光」


ぽつり、ちさきがこぼした言葉は宙にぽっかりと浮かぶ。
汐鹿生で魚が泳いでいるみたいに。


「私そんなに、変わったかな……?」


不安げに、ゆらゆら綺麗な海の色の瞳が揺れた。
ぐらりぐらり揺れるそれを直視し続けられなくて、俺は何とはなしに視線を斜め下に落とす。


「変わったかもしんねーな。でも、ちさきはちさきだろ。お前は俺の知ってる、比良平ちさきだ」


ぽかんと、驚いたようにちさきは動きを止めた。
行き場に困った浮いた手が、そわそわ漂ってから重力に従いストンと足の横に添えられる。

目尻を緩やかに下げ、ちさきは噛み締めるように頬を染め、本当に嬉しそうにまた「ありがとう」と呟いた。

流氷セカイの幕開け
 (上手く、見られないよ)


日記に上げたものをこっちに移しました。
ちさき本当大好きです。
これは光視点の光←ちさきだけど、私は要を応援しています。
今度書きたい。

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